オーケストラ・ニッポニカの設立20周年記念シリーズの第1回。
今回のプログラムの主旨は以下の通り。
『私どもオーケストラ・ニッポニカは、お陰様で本年度設立20周年を迎えます。
この設立20周年を記念して3回の連続演奏会を企画し、日本の管弦楽作品の多彩な魅力を存分に味わいつつ、管弦楽作品の創作の歴史を俯瞰できるようにと、プログラミングいたしました。委嘱作品の世界初演、昨年譜面が発見された作品の日本初演、90年ぶりの再演となる作品など、意欲的な選曲をしておりますので、それぞれの演奏会は単独でも、お楽しみいただけること請け合いです。
7月の連続演奏会I(40回)では、ニッポニカが名称の冠にその名を戴く芥川也寸志の代表的な作品2曲をメインとし、彼が「エローラ交響曲」を献呈した作曲家・早坂文雄の1940年代を代表する協奏曲、及び古関裕而が19歳で作曲した交響詩を原典版で演奏します。エリザベートコンクール3位に輝く務川慧悟さんが早坂文雄のピアノ協奏曲のソリストであることにも期待が膨らみます。』
タイミング良く今年4月にオーケストラ・ニッポニカは第38回演奏会 <松村禎三交響作品展>が【第21回佐治敬三賞】を受賞した。
第21回(2021年度)佐治敬三賞は「オーケストラ・ニッポニカ第38回演奏会 松村禎三交響作品展」「オペラ『ロミオがジュリエット』世界初演」に決定 2022年4月4日 ニュースリリース サントリー (suntory.co.jp)
このコンサートのレヴューはブログに書きました。
https://ameblo.jp/baybay22/entry-12687503026.html
ライブCDが、7月22日ナクソス・ジャパンから「松村禎三交響作品集」として発売された。MYCL-00030 3300円(税込)
コンサートの1曲目は古関裕而「交響詩《大地の反逆》」。作曲当時19歳。
音楽はワーグナー《さまよえるオランダ人》序曲のような趣があり、最後は運命動機の全合奏とティンパニの強打で終わる。
初演は1930年10月16日、日本青年館で、小松平五郎指揮国民交響楽団により行われた。
音源はなく、一般に聴く機会はほぼないと思うので、こうした作品を紹介するオーケストラ・ニッポニカの活動は毎回感嘆する。
2曲目は早坂文雄「ピアノ協奏曲第1番」(1948)。
演奏時間33分ほどの大作。第1楽章レントと第2楽章ロンドからなる。
早坂によると「第1楽章は人間の哀切さ誠実さを、詩情をもって大きな発想で出した」とのこと。
印象としては、大河ドラマの音楽のような、あるいはドキュメンタリー映画の音楽のように、雄大で大河が流れていくよう。
務川慧悟のピアノが瑞々しい音で力強く、また抒情性もあり、作品の魅力を伝えた。
第2楽章は一転軽快な音楽。芥川也寸志のようなオスティナートのリズムと旋律が続く。務川慧悟は闊達に弾いていく。
早坂は「ロンド形式だが、発想はスケルツォ。楽想は東洋人であればみなどこかにひそんでいる気持ちで諧謔とは少し違う。明るくエピキュリアン的性格、ダイナミックな近代的メカニズムとの結びつきを描いた」と言う。ピアノはほぼ弾き続ける。コーダは明るく華麗。ガーシュイン的な華やかさがある。
鈴木秀美指揮オーケストラ・ニッポニカも熱い演奏を展開していた。
この作品は岡田博美がナクソスに録音している。
Fumio Hayasaka Piano Concerto in D minor 1948 - YouTube
岡田博美 (ピアノ)
ロシア・フィルハーモニー管弦楽団 ドミトリ・ヤブロンスキー (指揮)
後半は、「芥川也寸志メモリアル オーケストラ・ニッポニカ」 と正式名称があるように、芥川の意志を継ぐ団体として発足したオーケストラの支柱である芥川の代表曲2曲が演奏された。
「エローラ交響曲」(1958)
楽曲についてはウィキペディアに詳細解説がある。
エローラ交響曲 - Wikipedia
芥川也寸志自身の楽曲解説を要約する。
『全20楽章。これらは2つの性格に分けられている。レント、アダージョの楽章と、アレグロの楽章。各楽章の演奏順位は指揮者に一任される。ある楽章を割愛しても、重複しても自由。ただし第17楽章から18へ、第19楽章から20へは常に続けて演奏すること』
女性楽章と男性楽章が以下のように構成される。今日は初演時に芥川が8・14・15・16番目に当たる楽章を削除し、3番目と4番目の楽章を一つに繋げた全15楽章の版で演奏された。(最初のブログでは全20楽章と書きましたが、誤りでした。お詫びして訂正します)
女性と男性の構成としては下記のようになる。
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鈴木秀美指揮オーケストラ・ニッポニカの演奏は素晴らしかった。切れがあり、エネルギーに満ちている。芥川也寸志の名を冠するニッポニカの矜持を示す力強い演奏に客席も沸いた。鈴木秀美は、スコアを手に持ち、スコアと共に客席にお辞儀した。
エローラ交響曲 - YouTube
岩城宏之指揮NHK交響楽団
最後は「交響管弦楽のための音楽」(1950)
簡単な解説がウィキペディアにある。
交響管弦楽のための音楽 - Wikipedia
芥川也寸志の作風であるオスティナートのプロコフィエフ的な主題と、イングリッシュ・ホルンによる哀感を帯びた中間部からなる第1楽章は戦後復興の勢いを感じさせる。強烈なシンバルに始まる活気に満ちた第2楽章の金管のユニゾンの主題は、活力にあふれる。流麗な第2主題は洒落たセンスがある。
1955年来日したシンフォニー・オブ・ジ・エアーに帯同した指揮者、ソーア・ジョンソンも気に入り、アメリカで数多く演奏したという。
これは爽快な演奏で、コンサートを締めくくるにふさわしい。
音源
交響管弦楽のための音楽 芥川也寸志作曲 東京フィルハーモニー交響楽団 - YouTube
オーケストラ・ニッポニカの設立20周年記念連続演奏会第2回は、12月11日、紀尾井ホールで、藤家渓子「思い出す ひとびとのしぐさを」(1994)、藤倉大「オーケストラのための《トカール・イ・ルチャール》」(2010/2011)、糀場富美子「未風化の7つの横顔─ピアノとオーケストラの為に」(2005)、諸井三郎「交響曲第2番」(1938)という、現代と過去の作品を組み合わせたプログラム。
指揮は、野平一郎、ピアノは阪田知樹(糀場富美子作品)。