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Channel: ベイのコンサート日記
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イブラギモヴァの繊細なブラームス「ヴァイオリン協奏曲」大野和士&都響(9月3日・東京芸術劇場)

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今日はイブラギモヴァのブラームスのヴァイオリン協奏曲に尽きる。
言ってみれば、超高級フレンチレストランの味。繊細で奥行きがあって、様々な味わいが次々に登場する。

 

こんなに繊細な美音のブラームスを聴いたのは初めて。第1楽章のカデンツァの重音が変化していく際の虹が広がるようなあでやかで繊細な色調の変化には驚嘆した。

第2楽章の美しさも圧巻。中間部はコロラトゥーラが玉を転がすように滑らかに装飾を加えて歌うように、イブラギモヴァは羽根が生えたような軽やかで素早い動きで滑らかに弾いていく。陶然としてしまった。

一方で緊張感の漂う第1楽章第1主題や、躍動する第3楽章も、細身の音ながらしっかりと客席まで届いてくる。

イブラギモヴァの演奏は、2013年から2019年まで、これまで5回聴いているが、ここまで徹頭徹尾美しい演奏は、2015年9月、ミューザ川崎で聴いたモーツァルト「ヴァイオリン協奏曲第3番」以来だ。


彼女は作品に応じて、楽器を替え、奏法を変える。バッハやベートーヴェンの切り込みの鋭い演奏と、今日のブラームスは大きく異なる。

そうしたイブラギモヴァの多彩な演奏、奏法、表現については、このブログの最後に、これまでのコンサート・レヴューをまとめたので、お時間のある時にお読みください。

 

大野和士都響は第1楽章から第2楽章はイブラギモヴァに丁寧につけていたが、第3楽章はいささか粗かった。

 

後半のブラームス「交響曲第2番」は、協奏曲の第3楽章の雰囲気が持ち越され、《ニュルンベルクのマイスタージンガー》以降好調だった大野和士&都響が以前の状態に戻ってしまった印象があった。16型のオーケストラは良く鳴るものの、心に訴求するものが少ない。

 

コンサートマスターは矢部達哉と山本友重のツートップ、ヴィオラも店村眞積と鈴木学が並ぶ。オーボエやホルンはゲストが入っていたが、都響としてはベストメンバー。

その素晴らしいオーケストラが、なぜ音が鳴っているだけのように聞こえてくるのか。もっと重層的で、繊細で、対位法的で、豊かで、奥行きのあるブラームスがいくらでもできそうなものなのに不思議で仕方がない。

 

大野和士の指揮には、間(ま)がない。息をする余裕がないように思える。常に緊張を強いるような指揮ぶりにより、良く言えばオーケストラは引き締まるが、それが音楽の硬さ、柔軟性のなさにつながるのではないだろうか。

 

 

写真:©都響

**********イブラギモヴァの過去のレヴュー**************

アリーナ・イブラギモヴァ&セドリック・ディベルキアン ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会 第1夜&第3夜
(2013年9月18日、20日・王子ホール)

(ブログを始める前mixiの記事)

https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1912365897&owner_id=15218407

 

アリーナ・イブラギモヴァ J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ全曲

(2014年12月21日・王子ホール)

https://ameblo.jp/baybay22/entry-11967390171.html

 

 

アリーナ・イブラギモヴァ パトリチア・ピツァラ  東京交響楽団(2015年 9月27日、ミューザ川崎)

https://ameblo.jp/baybay22/entry-12077927071.html

 

アリーナ・イブラギモヴァ&セドリック・ティベルキアン モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会Vol.3

(2015年10月3日、王子ホール)

https://ameblo.jp/baybay22/entry-12080208250.html

キアロスクーロ・カルテット(2019年4月23日、王子ホール)

https://ameblo.jp/baybay22/entry-12456493285.html


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