シェーンベルク:浄められた夜 op.4
都響は16型の弦。コントラバスは正面に並ぶ。ヴィオラは下手だが、前に詰め、先頭は4人が横一列に並んだ。コンサートマスターは四方恭子だが、矢部達哉がトップサイドに座る万全の布陣。
小泉和裕の指揮は都響の弦の実力を十二分に引き出し、まさにタイトル通りのVerklärte「浄らかに変容していく」演奏。緻密で温かく、分厚い響きは豪華だった。
コーダの第2ヴァイオリンのアルペジオが天国的に響いた。
ブラームス(シェーンベルク編曲):ピアノ四重奏曲第1番 ト短調 op.25(管弦楽版)
小泉は巨匠とも言える懐の深い余裕のある指揮。「浄められた夜」と同じく、響きが温かく、分厚い。
特に凄かったのが第4楽章。アラ・ツィンガレーゼ(ジプシー風に)の表情記号通りのジプシー音楽の熱狂が渦巻く。オリジナルのピアノ四重奏曲でもアンコールで良く演奏される楽章だが、これを16型の大オーケストラで聴くと、その迫力も半端ないものがある。
トゥッティの展開部での再現は、大きく見栄を切るような、タメを取るノリノリの指揮。都響のメンバーも楽しんで全力演奏を展開していた。
第2楽章と第3楽章では、客演でオーボエ首席に座ったN響の池田昭子が歌心たっぷりのソロを連発していた。
第3楽章中間部の行進曲は打楽器とともに小泉が気持ちのいいほど都響を鳴らした。
小泉は若々しく覇気に満ちた指揮ぶり。融通無碍の円熟の境地に向かいつつあると感じた。
写真©都響