(2月16日・東京オペラシティ)
グリーグ/ピアノ協奏曲イ短調Op.16
ニュウニュウのピアノはペダルを踏みこみ、多少の音の濁りはかまわず豪快に弾いていく。沼尻竜典&神奈川フィルも容赦なく強奏で応える。チェロの第2主題が気持ちよく鳴る。
第2楽章は神奈川フィルが温かな響きの弦で開始、ニュウニュウは抒情的に弾いていく。第3楽章もニュウニュウのピアノは荒々しく攻めていくが曲想には合う。中間部のフルートはもう少し北欧らしい清涼感も欲しかった。ピアノは落ち着きオーケストラと美しく絡み合う。カデンツァは強烈。そこまで弾くかというほど強く叩く。コーダはさすがにオーケストラの強奏に埋もれる。
マーラー/交響曲第7番ホ短調「夜の歌」
演奏機会が少なく、複雑怪奇な曲をまとめることは指揮者にとってプレッシャーもあるが、指揮をするのは4回目という沼尻竜典は、小細工なしにストレートに作品に向かう。神奈川フィルも溌剌とした演奏で応え、爽快な演奏となった。
沼尻&神奈川フィルの音は温かみがあり、コンサートマスター大江馨以下ヴァイオリンは繊細で、きれいな響きがあった。
テノールホルンは普段はユーフォニアム奏者として新日本フィルに所属する齋藤充。テューバの横に座り、冒頭から温かく見事なソロを披露した。
神奈川フィルのホルン群も坂東裕香以下大健闘。他の金管も存分に吹き、木管もよくまとまっていた。
各楽章を振り返ると、
第1楽章は再現部が印象的。明るく色彩的。神奈川フィルらしく元気に進む。
「夜の歌」と記されている第2楽章、冒頭の2本のホルンが決まる。沼尻が『骸骨を想起させる』と語る第2ヴァイオリンのコル・ネーリョ(弓の棹で弦を叩く奏法)はそれほど不気味ではなかった。第1トリオのチェロが爽やか。今日は上森祥平以下チェロ群がいい演奏を繰り広げた。
「影のように」とマーラーが指示した第3楽章。沼尻の指揮は癖がなくわかりやすい。トリオの死の舞踏も盛り上がる。第1部の再現では狂乱の死の舞踏が再び繰り広げられ、最後はティンパニとヴィオラだけで唐突に終わった。
第4楽章も「夜の歌」というタイトル。大江馨が柔らかなソロを弾いて始まる。ギターとマンドリン、ハープが応え、和みの音楽となる。
トリオのチェロがおおらか。第3部は甘い旋律が展開されていく。ホルンががんばった。クラリネットの長いトリルの後、ふわりと終わった。
沼尻が『LEDの照明で異様に明るい深夜の田舎のコンビニ』と評した第5楽章。
お祭りの開始を告げるような金管のファンファーレで始まる。狂ったように盛り上げ、突然オーボエの愛らしいソロが入る。弦が刻む第2副主題、木管の第3副主題と続き、ロンド主題が回帰。ティンパニの印象的なリズムとともに、今までに出た主題をとっかえ、ひっかえ出し、どんちゃん騒ぎが始まり、シンバルの早打ちなども入り、お祭り騒ぎが頂点を迎え、楽員全員が踊るようにノリノリで演奏、神奈川フィルの若さが爆発するクライマックスで締めた。
沼尻竜典と神奈川フィルの相性の良さを感じさせる爽やかなマーラーだった。