Quantcast
Channel: ベイのコンサート日記
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1645

パーヴォ・ヤルヴィ NHK交響楽団 「展覧会の絵」ほか

$
0
0

パーヴォ・ヤルヴィ NHK交響楽団 (915日サントリーホール)

 ヤルヴィN響の真価は、NHKホールではわからないことを痛感。サントリーホールで聴く彼らの演奏が世界のレベルに達していることを感じさせる。

 ムソルグスキー(ラヴェル編曲)「展覧会の絵」は、きりりと引き締まり、筋肉質で強靭。弱音の繊細さ、色彩感、細やかなニュアンスまですみずみまで神経の行き届いた緻密な演奏であり、N響の楽員の技術の高さを改めて認識する。トランペット、テリューバ、ホルンなどの金管。ヴィオラとチェロの中低音の充実ぶりもすばらしい。ソニー・ミュージックによる録音が入っており、つも以上に楽員が燃えているのがわかる。
 

 第1曲<ノーム>終結部のすさまじさ。第3曲<チュイルリーの庭>の繊細でやわらかな響き。第4曲<ブィドロ>の奥行きのある低音。第5曲<卵のからをつけたひなの踊り>のユーモア。第6曲<サミュエル・ゴールデンベルクとシュミレ>の高音トランペットの正確な演奏。第8曲<カタコンブ>の深み。第9曲<バーバ・ヤガーの小屋>の鮮やかな展開。そして第10曲<キエフの大門>の重心の低いがっちりとして精悍で堂々たる風格。巨大な鐘とその強烈な音が刺激的。見事な演奏だった。
 

ほかに、ムソルグスキーの交響詩「はげ山の一夜」の原典版、歌劇「ホヴァンチチナ」第4幕への間奏曲(リムスキー・コルサコフ編)も演奏されたが、原典版の野性的な生命力がよくわかった。
 

 意外な、と言っては、ヤルヴィに失礼だが、というのは、海外の指揮者が武満徹の作品を指揮すると、ともすればキンキラキンの衣装を伴うことが多いのだが、ヤルヴィの指揮はそういうことはなく、素直に武満の響きを表現していたように思う。

 「ア・ウェイ・ア・ローン」(1981)と「ハウ・スロー・ザ・ウィンド」が演奏されたが、いずれもN響の弦の繊細さを引き出していた。特に、弦以外の楽器が入る「ハウ・スロー・ザ・ウィンド」に感銘を受けた。武満は1970年代初め、ガムラン音楽を実際に聴き衝撃を受けたが、そのガムランのような響きが一部感じられた。最後の打楽器の音が宙に消えていくさまは、音楽と自然が一体になるようであり、ステージに風が吹いているように感じられた。音が心にいつまでも残るようでもあった。
写真:(c)

 

 

 

 

 


Viewing all articles
Browse latest Browse all 1645

Trending Articles