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Channel: ベイのコンサート日記
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ダニエル・ブレンドゥルフ 読売日本交響楽団 宮田 大(チェロ)

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(613日、東京芸術劇場コンサートホール)

 1981年スウェーデン、ストックホルム生まれ36歳の若手指揮者ダニエル・ブレンドゥルフの日本デビュー。チェリストとして活動していたが、指揮に転向。2008年スウェーデン指揮者コンクール第1位。オペラ指揮者としてもスウェーデン王立歌劇場ほかで活躍している。

 

 シベリウス《トゥオネラの白鳥》のイングリッシュ・ホルンソロは北村貴子。温かな音色だが、もう少し陰影があってもよかったのでは。気になったのは大太鼓が少し大き過ぎたこと。金管のあとに出る弦楽は分厚く、奥行きがあった。

 宮田 大を迎えてのショスタコーヴィチ「チェロ協奏曲第1番」は、宮田のソロが素晴らしい第2、第3楽章が出色。難しいフラジオレットも正確で、細やかな表現を聴かせた。第3楽章のカデンツァも見事。その一方で、ブレンドゥルフは、チェリストだったためか、リズムがやや重く、第1、第4楽章は切れ味がもう少しほしいと思った。宮田のアンコールはバッハ「無伴奏チェロ組曲第3番からブーレ」。

 

 リムスキー=コルサコフの《シェエラザード》は、読響の底力が全開した。コンサートマスター長原幸太のシェエラザードのソロは妖艶とまではいかないものの、張りと輝きがあり、音程も安定している。チェロ首席遠藤真理のソロは艶やか。ファゴット(吉田 将)、クラリネット(金子 平)、オーボエ(辻 功)、フルート(倉田 優)が素晴らしいソロを披露した。金管もトロンボーンを始め、ホルン、トランペットも好演。弦セクションも充実していた。

 《シェエラザード》はオーケストラの楽員にとって、腕の見せ場が多く、最も好まれる作品だと宮本文昭が書いていたが、読響も演奏のしがいがあったことだろう。終わった後、全員の充実感ある表情がよかった。

 

 これだけオーケストラが優秀だと、ブレンドゥルフもさぞかし指揮しやすかったのではないだろうか。読響の力を引き出したブレンドゥルフをほめるべきか。冒頭のトロンボーンを盛大に鳴らし、第4楽章の難破の場面では、音量は最高潮に達した。ただ、ブレンドゥルフの指揮は、劇的でオペラのクライマックスのような場面では、効を奏するが、細やかなニュアンスの表現にはまだ課題がある。たとえば、第3楽章「若い王子と王女」は、夢見るようなロマンスとまでは行かず、表情が単調だった。

しかし36歳という若さにしては、オーケストラのコントロールができており、この先楽しみな指揮者であることは間違いない。勢いは若さから来るものであり、今後経験を積むことで、深みも加わってくるのではないか。

写真:ダニエル・ブレンドゥルフ() Marco Borggreve、宮田大()亀村俊二

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 


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