(6月16日、東京文化会館)
ヘヴィー級のプログラム。午後9時少し前に終わったが、ロシアの魂がたっぷりとつまった曲ばかり。ラザレフと日本フィルのエネルギーとスタミナに敬意を表したくなる。
グラズノフ《お嬢様女中(恋のたくらみ)》は、副題に<ワトー風の牧歌>とあるように、ロココ様式の雅な宴の画家、フランスのアントワーヌ・ワトー(ヴァトー)(1684-1721)の絵の世界をイメージしたバレエ。50分という長い時間、休みなしに続けて演奏された。
このバレエは見たことがないが、上品で趣味の良い音楽、情景が目に浮かぶような美しく楽しい作品だ。ラザレフと日本フィルは、作品の持つ弾むようなリズムに裏打ちされた色彩的で生き生きとした演奏を繰り広げた。「第7場グランド・ワルツ」が華麗な演奏。また公爵とイザベラがめでたく結ばれ、ヴァイオリンとチェロが二人の踊りを描く部分「婚約者たちのグラン・パ」が美しい。ソロはコンサートマスター扇谷泰朋とソロ・チェロの辻本玲。
後半はプロコフィエフ。若林 顕を迎えたピアノ協奏曲第1番は、豪壮な演奏。特に幻想的で繊細な第2部から、冒頭の序奏主題が劇的に展開されるアレグロ・スケルツァンドの第3部終結部は、ラザレフ日本フィルと若林 顕が一体となり、聴きごたえがあった。
プロコフィエフ「スキタイ組曲《アラとロリー》」は、4つの曲それぞれのクライマックスに迫力があり、特に第4曲「ロリーの栄えある出発と太陽の行進」の最後の壮大な結末は、ラザレフは両手を高く掲げ、輝かしい音を日本フィルから引き出した。
ラザレフの日本フィルの楽員を称賛する姿はもうお馴染みだが、この夜は特に満足気だったのが印象に残った。オクラヴィア・レコードが録音していたので、発売が楽しみだ。
写真:アレクサンドル・ラザレフ(c)山口敦