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Channel: ベイのコンサート日記
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ヨーン・ストルゴーズ 読響 小山実稚恵(ピアノ)

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830日、サントリーホール)

 ヘルシンキ生まれで2015年までヘルシンキ・フィルの首席指揮者を務めたストルゴーズが読響に初登場。正確には26日の東京芸術劇場コンサートホールに続き2度目。26日の演奏については「音楽の友」10月号に投稿したのでここでは触れないが、その時受けた印象と同じことを今日も感じた。

 メインのシベリウス「交響曲第2番」にストルゴーズの指揮の特徴が良く出ていた。豪快でダイナミックな指揮。オーケストラをよく鳴らす。男性的であり力強いが、鳴らし過ぎるのでデュナーミク(強弱の変化によって表情を変えること)が単調になる。楽器間のバランスにもあまり気が使われておらず、響きが団子になり、音楽に奥行きがなくなることもある。

 ただ1曲目のアレッサンドレスク「秋の黄昏時」では、繊細な弦楽合奏の美しさをよく出していた。弦を歌わせることに長けているのは、ストルゴーズがかつてスウェーデン放送響のコンサートマスターだったことを思い出させた。こういうことができるのに、いざ交響曲になるとなぜあれほどオーケストラを煽るのかが不思議だった。

 

 しかし、シベリウスの最終楽章のコーダで音楽は劇的とも言える大変身を遂げた。それがストルゴーズの指揮からくるものなのか、あるいは読響の楽員の底力に火が付いたのか。ロ短調からニ長調へ、闇から明への雄大な変貌。コントラバスの重低音、ピチカートが素晴らしい。その盤石な土台の上に弦楽器、木管、金管、そしてティンパニがため込んでいたエネルギーを放出するように、大瀑布が轟音をたて真っ逆さまに砕け落ちるように、文字通りサントリーホールが震えるような轟音とともに壮大なクライマックスを築き上げた。

 

小山実稚恵のショパン「ピアノ協奏曲第1番」、いつものような安定と安心感。煌めきはあるのだが、全曲にわたって持続しない点が気になった。第3楽章ではやや集中を欠いた。アンコールのショパン「ワルツ第19番(遺作)」は詩的な美しさを取り戻していたが、各ホールやオーケストラからも引っ張りだこの人気であり、忙しすぎるのではないかと心配だ。演奏を深めるための時間がじっくりとれるようマネジメントが配慮すべきではないだろうか。

 

写真:ヨーン・ストルゴーズ(c) Marco Boggareve 小山実稚恵(c))ND CHOW

 


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