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Channel: ベイのコンサート日記
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《間宮芳生90歳記念》 オペラ「ニホンザル・スキトオリメ」 54年ぶりの再演

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(オーケストラ・ニッポニカ第34回演奏会、127日、すみだトリフォニーホール)

  間宮芳生(まみやみちお)の大作オペラ「ニホンザル・スキトオリメ」が、なんとアマチュア・オーケストラであるオーケストラ・ニッポニカによって54年ぶりにセミ・ステージ形式で再演された。

 

 録音もないため指揮をとった野平一郎をはじめ寺嶋陸也など間宮芳生の弟子たちも聴いたことがない幻のオペラだったが、数年前オーケストラ・ニッポニカのミュージック・アドヴァイザーに就任した野平が間宮から「ニホンザル・スキトオリメ」を作曲したころ最もオーケストラが良く書けていたと聞き、「ひょっとしたら再演できるのでは」とオーケストラ・ニッポニカに提案したという。ニッポニカも「大編成だがぜひ実現しよう」という運びになり、2年前NHKから楽譜を借り準備し、間宮が今年90歳になるのを記念してついに上演にこぎつけた。

 

 

 プロローグと全8景、エピローグからなる作品だが、今回この記念すべき上演に合わせオーケストラ・ニッポニカから間宮に委嘱した作品「女王ざるの間奏曲」が休憩後第4景の前に演奏された。

 

 ニッポニカの資料による概要はつぎのとおり。
「このオペラは、詩人・木島始による大人のための童話を原作とする日本語オペラです。物語は、滅亡の危機にさらされているニホンザル一族の王国が舞台。みずからの美しさと権力を永遠のものにしたい女王ザル、へつらう取り巻き、愚かな民衆ザルたち。そこへ、権力の性と民衆たちの真相を見抜いて描きつくそうとする一匹の絵描きザル「スキトオリメ」が登場する」という内容。

 

 そしてあらすじはこういうもの。
「日ニホンザル王国の女王ザルは、自分の美しさを永遠のものにするため、絵描きザルたちに肖像画を描かせます。しかし、美しく描かれてもまだ満足出来ない聡明な女王ザルは、「サルデアッテサルデナイ、カミサマ」になろうとします。その欲望をかなえる間もなく、ニホンザル王国と敵対するイヌたち(文字通りの犬猿の仲)との激しい戦いが始まり、やがてイヌを従えた人間たちの攻撃によって、ニホンザル王国は炎に包まれ滅亡してしまいます。一部始終を見た「クスノキ」が語り掛けるのは

 

 印象としては、サルの世界にたとえた人間社会の比喩であり、権力とそれに操られる民衆の姿にたいする皮肉、警告ととれる。音楽的にはバラエティに富んでおり、バグパイプやリュート、リコーダーという古楽器を1965年当時使用した間宮芳生のセンスの良さを感じた。

 

 また管弦楽の色彩感の豊かなことにも驚いた。その一方で歌手たちは旋律をアリアというより、ワーグナーの楽劇を思わせるモノローグのような長いセリフを音楽に乗せて歌う。一方でオーケストラは旋律美のある音楽を奏でる。オーケストラにドラマの進行状況を奏させ、歌手は日本語の語りによりその内容を説明するという間宮の作曲手法によるものだろうと思う。

 

 オーケストラ・ニッポニカはゲストコンサートマスターに山口裕之を迎え、熱の入った演奏を繰り広げた。プロの歌手5人と語りの根本泰彦も全力を尽くしていた。

 

フルオーケストラに5人のソリスト、語り、混声合唱、バグパイプやリュート、リコーダー、そしてピアノ、チェレスタにオルガンも入るというプロのオーケストラでも尻込みする規模の公演を実現した関係者各位の熱意と実行力に敬意を表したい。

 

 

 

間宮芳生:オペラ「ニホンザル・スキトオリメ」(1965

セミ・ステージ形式/日本語上演/字幕付き

台本: 木島 始

指揮: 野平 一郎

演出: 田尾下 哲

副指揮: 四野見 和敏

キャスト:

スキトオリメ (テノール)  大槻 孝志

女王ザル(ソプラノ)   田崎 尚美

オトモザル (バリトン)  原田 圭

ソノトオリメ (バリトン) 山下 浩司

くすの木 (バリトン)  北川 辰彦

(俳優)       根本 泰彦

合唱: ヴォーカル・コンソート東京/コール・ジューン

管弦楽: オーケストラ・ニッポニカ

 

写真:終演後のカーテンコール(c)澁谷学

 


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