Quantcast
Channel: ベイのコンサート日記
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1645

広上淳一 東京フィル 「休日の午後のコンサート」<もっと、チャイコフスキー>

$
0
0

23日、東京オペラシティコンサートホール)

 人気のシリーズ「休日の午後のコンサート(第79回)」は今日も満席。

広上淳一が東京フィルを指揮するのは2004年、2010年に続いて3度目、9年ぶり。コンサートマスターは依田新宣。

 

 本日のタイトルは「もっと、チャイコフスキー」。《スラヴ行進曲》から始まったが、広上は弦の音が聞こえないくらい金管を盛大に鳴らした。

 2曲目は「弦楽四重奏曲第1番より第2楽章《アンダンテ・カンタービレ》」。広上が指揮すると東京フィルの弦の音がいつもよりまろやかになる。

 

 3曲目「イタリア奇想曲」の前に「質問コーナー」があった。出演者があらかじめ聴衆に書いてもらった質問に答えるもので、このコンサートの売りのひとつになっている。

 一つ目の質問『広上さんはいつも指揮台の上で踊ったり飛び跳ねたりされていますね。また時々オーケストラに親指を立てていますが、意識的にされているのですか?』(場内爆笑)

 広上:『みなさん良く見ていますね。意識的ではないです(笑)。本当は指揮台の上で飛んではいけないのです。身体が小さいのでオーケストラに伝えようと自然にそうなるのかもしれません。親指は、アマオケを指揮した時いい演奏をしたので立ててからかな。ダメな時は下にしたかも(笑)。プロでも音が良くなるのできっと効果はあるのでしょう。』

 

 2つ目の質問『広上さんはいつも話をされる音楽家のお友達はいらっしゃいますか?どんな話をされるのですか?』

 広上:『たくさんいますよ。指揮者もソリストも声楽家も。指揮者なら山下一史と飲んだりします。音楽の話と言うより一般的な話、今年私は60歳なので老後どうしようとか。ひえー!もう60なんだ(笑)。山下と私は1982年の民音指揮者コンクール(現在の東京国際音楽コンクール<指揮者>)で共に入選。齋藤秀雄先生は「今年は5人全員入選だな」と言われたが、結果は1位が十束尚宏、2位が大野和士(註:3位小田野宏之)。3位までは賞金があったのに、山下と私は賞状のみ(笑)。』

 

広上:『《イタリア奇想曲》はその時初めてプロのオーケストラ(日本フィル)を指揮した思い出の曲。それまでピアノ連弾でしか指揮したことはなく、プロはこんなに凄い音がするんだと本当にびっくりした。』

 

《イタリア奇想曲》は2年前「平日の午後のコンサート」でバッティストーニがオーボエに出るイタリア民謡『美しい娘』を自ら歌って聞かせた後の、色彩感と歌心いっぱいの演奏がまだ生々しく耳に残っているため、つい比較してしまう。色彩感と歌心はバッティストーニだが、しっとりとした弦の響きは広上淳一ならではと思った。

 

休憩後の最初は「幻想序曲《ロミオとジュリエット》」。ここでも金管を強調、終結部の盛り上げと力強いコーダは凄まじい。

《弦楽セレナーデ》第1楽章の温かい演奏には広上の人間性が良く出ているように感じた。

 

最後はチャイコフスキー「大序曲《1812年》」。広上はこの曲にまつわる「大失敗」の思い出も話してくれた。

『まだ駆け出しの頃ローマでこの曲を指揮したときのこと。楽員は楽しそうに弾くけど、2小節ずれて弾いている奏者がいる。直そうとしているうちに2拍子から3拍子に変わるところで、自分もどちらか分からなくなってしまった。最後はぐしゃぐしゃになってしまったが、お客さんは大喜び。ブラヴィッシモ!と拍手喝采。みんなが音楽を楽しんでいるのを見て、こういうのもあるのかな、日本人は真面目すぎるのかなと思った。今日は真面目にやりますけど(笑)。』

 

この演奏は凄かった。正面2階バルコニー下手に大砲用の巨大なバスドラムとトランペット4人、上手にトロンボーン4人のバンダが配置される。最後はバスドラムがさく裂、バンダの金管とともにオーケストラの金管も咆哮、ホールは巨大な音響で埋め尽くされ、場内は熱狂した。

 

アンコールはないと広上淳一は前置きしたが、もうこれ以上は充分というくらいオーケストラを堪能した。NHKFMによる収録があり、毎週日曜午後720分から820分の「ブラボー!オーケストラ」で放送される予定(日程は未定)。

写真:広上淳一(C)Greg Sailor

 




 


Viewing all articles
Browse latest Browse all 1645

Trending Articles