(11月8日、サントリーホール)
トランペットの名手、ホーカン・ハーデンベルガーによるディーン(1961-)の「ドラマティス・ペルソネ」の日本初演と、ベンヤミン=グンナー・コールスによる新版を使ったブルックナーの交響曲第7番という意欲的なプログラム。
「スーパーヒローの転落」「独白」「偶発的革命」の3つの楽章からなる「ドラマティス・ペルソネ」(ラテン語で、劇作品における主役を意味する)はハーデンベルガーのために作曲された作品。弱音器を使った微妙な音から、バリバリと豪快に吹き続けるフレーズまで、ハーデンベルガーの超絶技巧を堪能できる作品で、視覚的にもハーデンベルガーがオーケストラの中のトランペットセクションの一員となって吹くなど、現代音楽の取りつきにくさがなく楽しめた。アンコールは「マイ・ファニー・バレンタイン」。ワンコーラスではなく、全曲をアドリブ付きで聴きたいと思うことしきりだった。
ハーディングのブルックナーは、細部まで目が行き届いた明快で精緻な指揮だった。新日本フィルも木管、金管、弦も健闘し、非常に良くまとまっているのだが、インパクトがほとんどないのはなぜだろう。ハーディングと新日本フィルが目指したのは静謐で室内楽のような演奏であり、巨大な建築物のようなブルックナーではない、ということか。それにしても、後に残るものが少ない演奏だった。ワーグナー・テューバの4人はエキストラだったが、第2楽章のコーダでのワーグナーのための葬送音楽や、静かに消えていく最後のハーモニーまで立派な演奏だった。
ベンヤミン=グンナー・コールスの改訂版はどこがどう以前の版と違うのか、聴いただけでは理解できなかった。第2楽章のクライマックスでのシンバル、トライアングル、ティンパニの使用はノーヴァク版と変わらなかった。
(c) Harald Hoffmann