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Channel: ベイのコンサート日記
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渡邉暁雄生誕100周年記念演奏会(6月22日、サントリーホール)

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 今年622日は渡邉暁雄の生誕100周年にあたる。渡邉は1956年の同じ622日、日本フィルの創設に参画、初代音楽監督、常任指揮者、常務理事に就任した。4月に日本フィルはインキネンとのヨーロッパ・ツアーを行い、フィンランドでシベリウスを演奏するという渡邉の悲願を実現した。今日は記念年の締めくくりとして、盛大に記念コンサートが催された。

 

 上皇陛下、上皇后陛下がご臨席され、コンサートはいっそう華やいだ。両陛下は前半のみご鑑賞された。警備は大勢配置されていたが、ご入場の際のカメラの放列はなく、公務から解放された両陛下はリラックスされてのご鑑賞だったと思う。上皇后陛下はサングラスをかけていらしたが、翌日の報道で白内障の手術を控えていらしたことを知った。

 

プログラム1曲目はシベリウス「交響詩《フィンランディア》」。日本フィルハーモニー協会合唱団も参加した。藤岡幸夫の指揮は合唱の入る中間部と終結部の「フィンランディア賛歌」は清々しくとても良かったが、金管が強奏されシンバルが打ち鳴らされる後半は勝利を高らかに歌う側面が強すぎ、作品の内面的な深さが陰に追いやられているように感じた。

 

2曲目のガーシュウィン「ピアノ協奏曲」への舞台転換の合間に、藤岡幸夫がスピーチした内容が心に残った。

『渡邉暁雄先生の内弟子として、6年間寝食を共にさせていただいた。先生は「とにかく新しいことをしなさい。他の人と違うことをしなさい」とおっしゃっていた。ご自身もN響とすべて違うことをされていた。早くからアメリカに行きミュンシュやストコフスキーと交友を結び日本に招聘、おかげで日本フィルは当時の大変な巨匠たちと共演できた。世界で初の(ステレオでの)シベリウス交響曲全集も録音された。また「我々音楽業界は過去の作曲家のおかげでメシが食えている。その恩返しとして我々業界は演奏家も評論家も今の作曲家を取り上げ紹介する義務がある」とおっしゃった。小山清茂さんの作品がお好きでよく指揮された。モダンなセンスがあり、ガーシュウィン「ピアノ協奏曲」を最初の演奏会で取り上げられた。今日は第1楽章を次男の渡邉規久雄さんの奥様、寺田悦子さんに、第1楽章を規久雄さんに、そして第3楽章を長男の渡邉康雄さんに弾いていただきます。』

 

 渡邉暁雄ファミリー総出演ともいうべきガーシュウィン「ピアノ協奏曲」の演奏はとても温かく、三人の演奏には渡邉暁雄の音楽を彷彿とさせる共通する「品格」があった。藤岡幸夫&日本フィルの演奏も、作品のブルースやジャズの雰囲気をよく醸しだしており、第3楽章は特に華やかに盛り上がった

 

前半の最後は小山清茂「管弦楽のための木挽歌」。195710月渡邉暁雄日本フィルにより初演された。素朴な「テーマ」、日本人そのものの「盆踊り」、爽やかな「朝の歌」、エネルギーに満ちた「フィナーレ」で終わる。「フィナーレ」は日本フィルが創立から現在に至るまで底に秘めている「音楽の力」を感じさせた。

 

後半はマーラー交響曲第5番「アダージェット」とシベリウス「交響曲第5番」。
シベリウスは1959428日、日比谷公会堂で渡邉暁雄日本フィルにより日本初演された。藤岡幸夫日本フィルの演奏は力強い推進力があった。個人的には第3楽章の弦のトレモロのpppのさらなる繊細さがほしいなど、いくつか要望はあったが、第3楽章コーダのトランペットによる感動的なモチーフの後の6つの和音の響きと、打音と打音の間の絶妙の「間」が素晴らしかった。
 藤岡が事前に曲について短く紹介したさいにも、「6つの和音の間に拍手しないでくださいね。人によっては拍手を避けるため間隔を短くする指揮者もいますが、私はそうしたくありません。この部分はフィンランドの雄大な自然が奏でるこだまを想像してください。」と話していたが、まさにその通りの決然とした響きによりスケールの大きい世界を創り出し、記念コンサートの最後を見事に締めくくっていた。

 

 

明日6月25日(火)から6月30日(日)の午前10時から午後4時(入館は午後3時30分まで)、鳩山会館(東京メトロ有楽町線、江戸川橋、護国寺駅)で、【渡邉暁雄生誕100年記念 写真・資料展】が開かれる。有料だが、日本フィル公演で配布されているチラシ持参の人は入場無料になる。早速行ってみたい。

 

 


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