(8月23日、横浜みなとみらい 大ホール)
常任指揮者の川瀬賢太郎が公演チラシの紹介文で書いている通り、
「これぞ、ど真ん中直球勝負のプログラム。第5番と第6番を並べるのは指揮者にとってとても勇気のいること」だと思う。
前半の「交響曲第6番《田園》」は、まさに小川がさらさらと穏やかに流れるような、滑らかでさわやかな演奏。速めのテンポでサクサクと進んでいく。たっぷりと歌わせてほしいと思う向きには少し物足りない。
しかし、第4楽章アレグロ、「雷雨、嵐」は吹きすさぶすさまじい嵐の情景がしっかりと表現された。
小泉和裕の本領は、後半の「交響曲第5番《運命》」で十二分に発揮された。これぞ巨匠の至芸という言葉がふさわしい、重厚さ、重み、響きの奥深さがあった。引き締まった音、速いテンポだが、揺るぎない強靭な響きが維持されていた。
第2楽章では2つの主題が出た後、推移部分のppで吹く2本のファゴットをしっかりと鳴らし、奥行きのあるハーモニーをつくっていたのも印象的だった。
第3楽章から第4楽章への移行も、重厚さがあり、終楽章のコーダも堂々としており、交響曲の王道を聴いたという、充分な満足感があった。客席からの反応も熱狂的で、スタンディングで拍手を送る聴衆もいた。
《田園》同様、《運命》も第1楽章提示部以外は、繰り返しは行わなかったが、中身が濃いため、繰り返しはなくとも充分満足できる演奏だった。
写真:小泉和裕(c)神奈川フィルハーモニー管弦楽団