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Channel: ベイのコンサート日記
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セバスティアン・ヴァイグレ指揮 読響 アルバン・ゲルハルト(チェロ)

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(9月10日、サントリーホール)

 ヴァイグレと読響の演奏は、これまで聴いた中で一番息が合っていた。特にハンス・ロット「交響曲第1番」は、自筆譜をもとに400箇所以上も修正した改訂版楽譜を作成、演奏会とCDを録音するほか、10以上のオーケストラで演奏したというほど、ヴァイグレがひとかたならぬ愛情をそそぐ作品であり、力も入っていたのだろう。ヴァイグレと読響の黄金時代を予感させる名演だった。

 

 ハンス・ロット「交響曲第1番」はワーグナーやブルックナーの影響が、はっきりと出ているが、一方でマーラーに多大な影響を与えた作品でもあり、第4楽章など、マーラーが「復活」を作曲する際、参考にしたことがうかがえる。

 

 ヴァイグレの丁寧で細部まで完璧に練り上げられた指揮は、作品が置かれた歴史的な位置と背景、ロットの作品のもつ独自性と異様なエネルギーを、明確に浮き彫りにした。この作品の真価を初めて知ることができたという感動があった。

 

 素晴らしいヴァイグレの指揮に応える読響の演奏が良かった。ハンス・ロットの交響曲はこういう響きであるべきだ、というヴァイグレの求める音を、見事に実現していた。一番印象に残ったのは、ホルン首席日橋辰朗の演奏。森の奥深くから響いてくる角笛のように、作品にふさわしい響きをつくっていた。

 

 前半は、プフィッツナー「チェロ協奏曲」イ短調(遺作)。プフィッツナー(1869-1949)はR.シュトラウスと同世代で、没年も同じ。この曲は20歳ころ書かれたが、1975年まで埋もれていた。初演は1977年。

 

 2楽章、23分前後の曲だが、どこに向かおうとしているのか、判然としない不安を抱かせる点で、どこかハンス・ロットの音楽と共通するものを個人的には感じた。ロマン派時代の語法にしがみつき、その呪縛から逃れられないような、堂々めぐりに陥る感覚も味わった。

 

 ソリストは1969年ベルリン生まれのアルバン・ゲルハルト。ヴァイグレとはプフィッツナー「チェロ協奏曲集」の録音もある。朗々とよく響くチェロだった。アンコールはJ.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第6番より「プレリュード」。伸びやかで滑らか、爽やかな風が吹き渡るような演奏が、この日の蒸し暑さを忘れさせた。

セバスティアン・ヴァイグレ:()読響

アルバン・ゲルハルト:()Kaupo Kikkas


 


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