(12月11日、NHKホール)
デュトワのマーラーはヤルヴィのようなギリギリと締め上げるような緊迫感を持つものではなく、明るく開放的で、色彩感にあふれている。オーケストラ・コントロールには余裕がありN響の力を十二分に引き出す。深刻で考えさせるようなマーラーではないが、マーラーのスコアの細部まで目の前で展開されていくような緻密で明快な指揮であり、スケールが大きいスペクタクルな演奏はオーケストラを聴く楽しみをとことん味あわせてくれる。
N響は金管が特に素晴らしく、トロンボーンを始め、ホルン、トランペットもほれぼれとする演奏を聴かせた。第3楽章のポスト・ホルンは舞台上手奥から聞こえてきたが見事なソロで、デュトワは演奏終了後指揮台前に呼び奏者を抱擁していた。
アルトのビルギット・レンメルトは温かな歌唱。合唱は東京音楽大学(女声合唱)とNHK東京児童合唱団だった。
明るく色彩感に満ちたマーラーではあるが、第6楽章の弦が奏でる主題は表面上の幸せな響きの裏に寂しさや孤独感がにじみでていた。これは9月に聴いたノット指揮東京交響楽団の演奏に通じるものがある。こうした響きを導き出すデュトワの指揮もすごいが、それに応えるN響の弦セクションの底力はその上を行くものだ。本当に今のN響は絶好調と言える。