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Channel: ベイのコンサート日記
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パーヴォ・ヤルヴィ N響 第九

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1222日、NHKホール)

60分を少し超える速いテンポの第九。しなやかで強靭、構成もしっかりしており、芯の部分は熱く、最終楽章では文字通り歓喜の合唱となって結ぶ。現代の感覚にマッチした奏者が一体となった見事な第九だった。弦はヴィブラートとノンヴィブラートのミックスのようで透明感があった。バッティストーニ&東京フィルも刺激的だったが、ヤルヴィも初めて聴くような驚きと発見に満ちた第九を聴かせた。


 そこかしこにヤルヴィのこだわりと工夫がこめられていた。第1楽章展開部では木管がマーラーの交響曲のように楽器を高く掲げる。チェロとコントラバスによる第4楽章「歓喜の主題」はピアニッシモくらいの繊細な弱音で始められた。続く115小節からの第2ファゴットはコントラバスと同じ旋律を吹くが、これはベーレンライター版によるものだろう。この部分は繊細で感動的だった。同じく第4楽章でテノールが歌う行進曲のバックではトランペットも加えられていた。

 
独唱陣は日本のトップクラスが集まった。ソプラノは森麻季が透き通った美声を聴かせ、アルト加納悦子、テノール福井敬は安定した歌唱、バリトンの妻屋秀和も丁寧で重厚感があった。日本の歌手陣で固めたことでまとまりの良さが出た。合唱は国立音楽大学の235人もの大合唱団だったが、ハーモニーが混濁せず透明感があり、ヤルヴィの方向性と一致していた。

ヤルヴィが演奏後ラジオ生出演で語ったように「第九はあらゆる表現に耐えうる名作である」ことを改めて実感させてくれる演奏だった。


写真:(c) Julia Baier


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