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Channel: ベイのコンサート日記
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「ニューイヤーコンサート2022」《響の森》Vol.49 飯森範親 都響 萩原麻未(ピアノ)

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(1月3日・東京文化会館大ホール)

着物姿の女性も見かけるなど、ニューイヤーコンサートの華やかさが感じられる会場は満席。

世界最初のエコバッグ「風呂敷」がプログラムと一緒に配られた。東京都及び公益財団法人東京都歴史文化財団アーツカウンシル東京が運営する「Tokyo Tokyo FESTIVAL」(オリンピック・パラリンピックに合せ芸術文化都市東京の魅力を伝える取り組み)の一貫。ポリエステル製だが、使い勝手が良さそう。

 

都響はこのところ絶好調に見える。大野和士と《ニュルンベルクのマイスタージンガー》を大成功させたことで、楽員に自信と意欲がみなぎっている。オペラを長期間体験し、歌手の声を聴くこと=奏者がお互いの音を聴くことに習熟したのでは。

 

都響は紅白歌合戦でドラゴンクエストのテーマを演奏した。休みは元旦だけで、今回は、昨日のリハーサルと当日の音合わせしかなかったはず。それでもアンサンブルは素晴らしく、弦が揃って美しく管楽器も好調だった。

飯森範親と都響の共演を聴くのは初めてだが、相性が良い印象で、演奏が充実していた。コンサートマスターは山本友重。

 

グリンカ「オペラ《ルスランとリュドミラ》序曲」は、ヴァイオリン群の颯爽とした演奏が鮮やか。『この曲はチェロが難しい』と辻本玲が昨年インタビューした時に語っていたが、高速で弾くチェロは見事に揃っていた。飯森は演奏後すぐにチェロ奏者達を立たせた。飯森の指揮はロシア的な味わいは少ないが、機能的で精密なアンサンブルと活気に溢れていた。

 

萩原麻未によるラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」は、重厚でロマンティック。冒頭の鐘の音に似た分散和音はペダルを駆使して、低音を強調し雄大に弾いた。飯森都響も分厚い重心の低い響きで第1主題を奏でる。ヴィオラの弾く第2主題も歌に満ちていた。

 

展開部でのクラリネットやフルート、再現部でのホルンによる第2主題のソロも素晴らしい。

第2楽章展開部のピアノによる華麗な発展やカデンツァでは萩原が美しく瑞々しいピアノをたっぷりと響かせた。

 

第3楽章は萩原が豪快に第1主題を展開し、ラフマニノフの真骨頂の第2主題をオーケストラとともに華麗に盛り上げた。コーダはピアノとオーケストラが一体となり大きな盛り上がりをつくった。

 

アンコールはJ.S.バッハ/グノー「アヴェ・マリア」。旋律を歌う萩原のピアノがピュアで美しい。

 

後半はビゼー「《アルルの女》組曲第1番・第2番」。

組曲の1曲をアンコールで聴くことはあるが、全曲が演奏される機会は少なく、個人的にも今回が初めての体験。

偶然だが、8日に東京芸術劇場で「劇音楽《アルルの女》(ドーデ原作台本による原典版、演奏会形式、朗読付日本語上演)」があるので、興味深く聴いた。
 

演奏は切れが良く、都響の演奏も充実しており、聞きごたえがあった。アルト・サクソフォンのソロや第2組の「メヌエット」でのフルートとハープも美しい。ビゼーの旋律美を堪能した。

アンコールはビゼーつながりで「オペラ《カルメン》前奏曲」。

 

飯森と都響、萩原麻未の熱い演奏は、ニューイヤーコンサートの華やかな雰囲気を一層盛り上げていた。

 

終演後は会館2階の精養軒で名物のチャプスイで早めの夕食。会館正面のエキュート2階から見る夜景も新鮮でした。



 


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