Quantcast
Channel: ベイのコンサート日記
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1645

飯守泰次郎 東京シティ・フィル シューマン交響曲全曲演奏シリーズII

$
0
0

(6月11日・東京オペラシティ)

昨年12月9日の第1回(第1番&第2番)は余りにも素晴らしく、『これを聴かずしてクラシック・ファンと言うなかれ!』という過激な言葉でブログを締めた。

超名演!! 飯守泰次郎 東京シティ・フィル【シューマン交響曲全曲演奏シリーズⅠ】 | ベイのコンサート日記 (ameblo.jp)

 

その時は会場の半分くらいしか埋まっていなかったが、今日は完売満席。高校生の音楽鑑賞教室の団体が参加したこともあったが、飯守東京シティ・フィルの名演が口コミで伝わったことも大きかったのだろう。

 

ただ心配なのはマエストロ飯守の健康状態。楽員全員が席についても、コンサートマスターの戸澤哲夫がなかなか登場しないのでどうしたのかと思っていたら、飯守の腕を抱えながら現れた。股関節の手術をして以来、歩くのが不自由そうだったが、介助を必要とするほどではなかっただけに気がかりだ。

 

飯守は前回も指揮台に椅子を置いたが、ほとんど立って指揮していた。今回は、最初は立ったものの、「交響曲第3番《ライン》」第2楽章の途中から椅子に腰かけ、以後立つことはなかった。

 

しかし、演奏はまたも素晴らしかった。「交響曲第3番《ライン》」は第1楽章から若々しい息吹にあふれる。シティ・フィルは好調で、展開部を告げるホルンの斉奏も良く鳴っていた。

 

第2楽章スケルツォの主題もラインの大河がゆったりと流れるようにスケールが大きい。間奏曲風の第3楽章も丁寧に進める。第4楽章のホルンとトロンボーンのコラールは荘重で重厚。聴いていると襟を正したくなる威厳があった。第5楽章も若々しく、コーダも活気と共に重心の低い堂々とした終わり方だった。

 

ただ正直言って、昨年12月の熱いエネルギッシュな指揮とは微妙な違いを感じた。その違いは、残念ながらマエストロの体調からきていると思う。立って指揮するのと座ってでは、オーケストラに伝わるエネルギーも違う。前回と較べると演奏の「張り」「芯の強さ」がやや足りなかった。

 

それでも、そうした肉体的な困難を乗り越えて聴き手を感動させるのは、飯守の楽曲に対する深い読みと、マエストロに全幅の信頼を寄せるシティ・フィルの意欲的な演奏であることは間違いない。格調の高さ、正統性という点でめったに聴けない素晴らしいシューマンだった。

 

後半の「交響曲第4番」は、さらに良かった。第1楽章序奏から前半とは違うエネルギーの強さが感じられた。上下に動く第1主題の切れの良さ。弦の艶やかなこと。コーダも盛り上がる。流麗な旋律が高らかに歌われ第1主題と共に壮麗に終わった。

 

第2楽章ロマンツェはしみじみとしている。どこか寂し気な表情があり、深い悲しみも感じられたが、中間部の戸澤哲夫のソロで少し和んだ。

 

第3楽章スケルツォは覇気があり、テンポも遅めで堂々としたもの。トリオはゆったりと歌う。

 

第4楽章はこの日最高の演奏。徐々に盛り上がっていく序奏の雄大なこと。弾むような第1主題と流れるような第2主題も活気に満ちている。金管の警告的な斉奏から始まる、展開部のフガートでの弦セクションの流麗さもとても良い。特にヴィオラとチェロが傑出していた。コーダは本当に素晴らしく、速度を速めて、雄大に堂々と締めくくった。

ここに至ってはマエストロの体調云々は吹き飛ぶような勢いと充実感があった。

 

スタンディングオベーションを贈る聴衆も多かったが、不自由な足で歩くマエストロを何度もカーテンコールするのは申し訳なく、先に席を立った。拍手は止まず長く大きく続いていたので、ソロカーテンコールに応えるため、楽員に支えられて舞台袖に登場したのではないだろうか。

 

マエストロ飯守泰次郎の体調が万全となり、また素晴らしい指揮を聴かせていただける機会を鶴首して待ちたい。

 

 

 


Viewing all articles
Browse latest Browse all 1645

Trending Articles