Quantcast
Channel: ベイのコンサート日記
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1645

50年ぶりの定期登場 秋山和慶 日本フィル 小川典子(ピアノ) (6月18日・サントリーホール)

$
0
0

秋山和慶が日本フィルの定期演奏会に50年ぶりに登場。

コンサートマスターは前半が田野倉雅秋、後半は木野雅之が務めた。

ドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」は秋山流。淡い色彩感とは少し異なる演奏だが、すっきりとして構造や響きが明解。フルート真鍋恵子、ホルン信末碩才、オーボエ杉原由希子が見事なソロ。

 

ラヴェル「ピアノ協奏曲」は、ここ数ヶ月間に四人のピアニストで聴いた。リーズ・ドゥ・ラ・サール、角野隼斗、北村朋幹、そして小川典子。小川の明確で力強いタッチ、曖昧さのないきっぱりとしたピアノはオーケストラに埋もれることがなく、終始よく聞こえてくる。

 

第2楽章はフルートをはじめ、日本フィルの木管が好演。弦の繊細な響きに続くピアノの32分音符の装飾音が美しく響いていく。

 

第3楽章も力強いピアノ。オッタビアーノ・クリストーフォリのトランペットも切れがあり、トロンボーンのグリッサンドも決まる。小川のピアノもコーダに向かって冴えわたり、力強く終わる。

 

アンコールはドビュッシー「亜麻色の髪の乙女」。透明感があり、音が明解。

 

後半のフォーレ「組曲≪ペレアスとメリザンド≫」も、チョン・ミョンフン、シャルル・デュトワに続いて三回目。丁寧で分かりやすい描写。

第1曲「前奏曲」のクライマックスをしっかりと鳴らす。フォーレは繊細という先入観に囚われない。一方でコーダの弦はとても細やか。

第2曲「糸を紡ぐ女」弱音器を付けた弦が繊細。オーボエのソロも美しい。

第3曲「シシリエンヌ」のフルートは輪郭のはっきりとした音。ハープはもう少し表情の変化がほしい。

第4曲「メリザンドの死」悲劇的な高まりがある演奏。

 

ラヴェル「ダフニスとクロエ第2組曲」は、輝くような色彩感と生命力の溢れた名演。秋山の指揮は細部まで目配りが効いていて、全ての楽器それぞれの役割が明確で、分離が良く、その上で一体感がある。

 

奏者は秋山の指揮に安心してついていくことができるのか、伸び伸びと演奏、実力を充分に発揮する。

「夜明け」は繊細な冒頭から色彩が感じられ、雄大に展開していく。

「パントマイム」は、フルートの透明感と生き生きとした動きのあるソロが際立つ。

 

「全員の踊り」は秋山が日本フィルの持てる力を最大限引き出す。色彩感に満ち、切れの良い演奏。全てのパートが明解に聞こえ、混濁がないため、ラヴェルの万華鏡のような華やかな管弦楽を存分に味わった。

秋山のフランス音楽をまとめて聴く機会は、これが初めて。ベートーヴェンやブラームスなどドイツ音楽の重厚な演奏とは異なるフランスもので、これほどの指揮を聞かせてもらえるとは予想していなかった。

 

楽員が秋山に送る拍手や足踏みは心がこもっていた。この先もぜひ日本フィルとの共演を続けてほしい。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 1645

Trending Articles