(8月18日・サントリーホール)
28歳という若いフィンランドの指揮者エミリア・ホーヴィングの日本デビュー。サロネン、マケラを育てたヨルマ・パヌラにも師事した。
フィンランドの現代音楽の巨匠、エウユハニ・ラウタヴァーラ(1928-2016)の作品ラウタヴァーラ「至福の島」(日本初演)では、
思い切りのいい若さが溢れる指揮で明解な解釈を聴かせた。管楽器も弦もしっかり鳴らすが、混濁せず抜けがいい。色彩感もある。
三浦文彰をソリストとするプロコフィエフ「ヴァイオリン協奏曲第2番」では丁寧に三浦に付けていく。ソリストを立てつつ、自分の音楽もきちんとつくる。
三浦のヴァイオリンは安定感があり、プロコフィエフの作品の美点を艶やかな音で描いていった。
三浦はアンコールでは、チェロ首席の遠藤真理の横に行き、シベリウスが10歳の時のピッツィカートだけの作品「Waterdrops水滴」を可愛らしく弾いた。
後半は、シベリウス「交響曲第5番」。ホーヴィングの指揮は活力に溢れ、最初の印象通り、思い切りの良さ、開放感に満たされる。シベリウスの生誕50年を祝うコンサートのために書かれた祝祭的な作品に対して、的を射た指揮。
読響は日橋辰朗他のホルン群をはじめとする金管、木管が好調。ホーヴィングが奏者たちから伸び伸びとした気持ちの良い演奏を引き出す。オーケストラが有機的に結びつき一体感を感じさせる。見通しの良い指揮はホーヴィングの才能を感じさせた。
第1楽章展開部のファゴットも伸びやか。ラルガメンテの幻想的な部分のスケールが大きい。中間部のトランペットのソロからスケルツォの再現への流れも良い。
第2楽章もピッツィカートの変奏もすっきりとしていた。
終楽章のラルガメンテ・アッサイの盛り上げ方は、ラトル&ロンドン交響楽団をはじめ、録音で聴く年輪を重ねた巨匠指揮者の演奏が刷り込まれている耳には、もう少し深みがあってもいいように感じた。
最後の強烈な6つの和音も重すぎず暗すぎず、雄大な響きで、しっかりと鳴らした。
残って拍手を続ける聴衆もあり、ソロ・カーテンコールとなった。読響への再登場を期待したい。