Quantcast
Channel: ベイのコンサート日記
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1645

アジス・ショハキモフ 東京交響楽団 ティーネ・ティング・ヘルセット(トランペット) 

$
0
0

(9月17日・サントリーホール)

アジス・ショハキモフを聴くのは4年前読響に客演で登場して以来。そのときも読響の力を100%引き出し、切れのいい爽快な指揮ぶりだった。

アジス・ショハキモフ 読響 ガブリエラ・モンテーロ(ピアノ) | ベイのコンサート日記 (ameblo.jp)

 

最後に載せたプロフィールにある通り、アジス・ショハキモフは1988年、ウズベキスタンのタシケント生まれの34歳。ストラスブール・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督、テクフェン・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督、芸術監督を務めるかたわら、世界の一流オーケストラに客演している。


公演2日前の9月15日、ミューザ川崎シンフォニーホールでリハーサルが終わったあと、「音楽の友」11月号に掲載するためのインタビューを行った。来年4月ワーナークラシックスから発売予定の新譜、プロコフィエフ「ロミオとジュリエット」(第1,第2組曲)、古典交響曲について主に聞いた。日本食が大好きで、以前よく通ったデュッセルドルフの日本料理店のような店がストラスブールにはないのがさびしいとのこと。子供たちも日本食が大好きだそうだが、まだ小さいので長距離の移動は難しいとも話していた。爽やかな好青年という印象だった。

 

今日のプログラムは

ドビュッシー:「管弦楽のための映像」より“イベリア”

トマジ:トランペット協奏曲

プロコフィエフ:交響曲 第5番 変ロ長調 op.100 
と前半はフランス音楽、後半は近代ロシア音楽が並ぶ。

 

ドビュッシー:「管弦楽のための映像」より“イベリア”

コンサートマスターはグレブ・ニキティン。第1部「通りから道から」第2部「夜の香り」は、色彩感豊かな演奏。ただどこかばらけて聞こえるというか、演奏を束ねる中心軸がはっきりとしない。ドビュッシーの作品自体の構造もあるのかもしれないが、すこし、もやもやした気分が残った。

しかし、ヴァイオリンとヴィオラがギターのようにアルペッジョを弾く第3部「祭りの日の朝」は俄然生き生きとした表情が出てきて、文字通りお祭りのようなにぎやかで楽しい演奏になった。

 

続いて、トマジ:トランペット協奏曲

ソリストはノルウェー出身の女性奏者、ティーネ・ティング・ヘルセット

とても抒情的でよく歌うトランペット。第1楽章は冒頭のファンファーレ主題をミュートなしで軽快に滑らかに吹くとともに、第2主題ではカップ・ミュート(ストレート・ミュートに筒状の円形物を足したもの。ストレート・ミュートよりも金属音が抑えられ、少しこもった音がする)を使い、しっとりと吹く。ストレート・ミュート(アルミでできた壺のような形態で、金属的な音が出る)でファンファーレの主題も吹いた。

「ブルースのテンポで」と指示のあるカデンツァは哀愁を感じさせる。

 

ハープの伴奏で静かに演奏される第2楽章はストレート・ミュートとカップ・ミュートを使いながら、幻想的に繊細に吹き進める。夜の音楽が夢のように奏でられた。ミュートを取って吹く部分は良く歌う。ショハキモフ東響も繊細。

第3楽章フィナーレは軽快に進むが、どこか哀感も漂う。ブルースの悲しみが出ているのかもしれない。最後は華やかに終わった。

 

ヘルセットのアンコールはオーレ・ブル「ラ・メランコリー」。まさに哀愁そのもの。日本人の情感にぴったりの曲だった。

 

オーレ・ボルネマン・ブル(Ole Borneman Bull、1810年2月5日 - 1880年8月17日)は、ノルウェーのヴァイオリニストならびに作曲家。「ノルウェー初の国際的スター」と呼ばれる。新旧両大陸を股にかけて波瀾万丈の生涯を送り、ヘンリック・イプセンの戯曲『ペール・ギュント』の主人公のモデルにもなった。(ウィキペディア)

 

 

後半は、プロコフィエフ:交響曲 第5番 変ロ長調 op.100 
第1楽章のコーダはスケールが大きい。テンポをゆったりととり、タムタムを強烈に鳴らし、じっくりとクライマックスをつくった。エネルギーの放射力が強い。フルートとオーボエの第2主題も抒情性が豊か。

 

第2楽章はエマニュエル・ヌヴーのクラリネットが軽快。ショハキモフの指揮は全体の見通しがいい。

中間部はショハキモフのセンスの良さを感じた。音色の多彩さ、各楽器の表情、打楽器のノリの良さ、など爽快な指揮ぶり。第1部再現の金管の導入もうまくまとめた。

 

第3楽章アダージョは暗い情念が持ち上がってくるような部分が重心も低くとても良かった。

 

第4楽章は、ヌヴーのクラリネットが快調。中間部は低弦の荘重な旋律が充実。

コーダに向けて盛り上がって行くところも、流れが自然で、無理なくうまくまとめていた。

東響の木管、金管は集中力があった。ショハキモフのフレッシュな感性が全開した爽やかな演奏だった。

 

しばらくの間、翌日のミューザ川崎シンフォニーホールの公演がニコニコ生放送で公開されている。映像のフリーズが頻繁に起こるのが残念。

【ドビュッシー、プロコフィエフ、トマジ】東京交響楽団 川崎定期演奏会 第87回 Live from MUZA≪ニコ響≫ - 2022/9/18(日) 14:00開始 - ニコニコ生放送 (nicovideo.jp)

 

 

 

アジス・ショハキモフ プロフィール

ストラスブール・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督、テクフェン・フィルハーモニー管弦楽団の芸術監督を務めている。2015年から2021年まで、ドイツ・オペラ・アム・ラインのカペルマイスターを務める。客演指揮では、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、NDRエルブフィルハーモニー管弦楽団、WDRケルン交響楽団、フランス放送交響楽団、バイエルン放送交響楽団、hr-Sinfonieorchesterなどのオーケストラを指揮している。北米では、トロント交響楽団、ヒューストン交響楽団、ユタ交響楽団を指揮している。

 

最近では、フランス国立管弦楽団、スイス・ロマンド管弦楽団、ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団、スウェーデン放送交響楽団、東京交響楽団、RAIトリノ、バーゼル交響楽団、シアトルおよびカンザスシティ交響楽団、ソウル・フィルハーモニック管弦楽団などを指揮する予定である。

 

アジス・ショハキモフは、オペラのレパートリーも豊富で、22/23にはパリ国立歌劇場にデビューし、ドニゼッティの「ランメルモールのルチア」を指揮する。ストラスブール・フィルハーモニー管弦楽団に在籍中は、シーズンごとにオペラ作品を指揮し、22/23シーズンはリムスキー=コルサコフの《サルタン王の物語》を指揮する予定である。ドイツ・オペラ・アム・ラインのカペルマイスターとして、『スペードの女王』、『蝶々夫人』、『サロメ』、『トスカ』などの新制作を指揮した。

 

ショハキモフはザルツブルク音楽祭と継続的な関係にあり、100人以上の候補者の中から選ばれた彼は、2016年8月に名誉あるザルツブルク音楽祭ヤングコンダクターズ賞を受賞した。2017年8月にはRSOウィーンとの受賞者コンサートでザルツブルク音楽祭に復帰し、2019年にはパトリシア・コパチンスカヤとザルツブルク音楽祭のオープニングセレモニーを指揮する。

 

1988年、ウズベキスタンのタシケントに生まれたショハキモフは、6歳でウスペンスキー英才音楽学校に入学し、ヴァイオリン、ヴィオラ、オーケストラ指揮(ウラディミール・ネイメル教授のクラス)を学ぶ。13歳でウズベキスタン国立交響楽団にデビューし、ベートーヴェンの交響曲第5番とリストのピアノ協奏曲第1番を指揮した。翌年、ウズベキスタン国立歌劇場で初のオペラ「カルメン」を指揮する。2001年にウズベキスタン国立交響楽団の副指揮者に就任し、2006年には同楽団の首席指揮者に就任した。2010年、若干21歳のショハキモフは、バンベルクのグスタフ・マーラー国際指揮者コンクールで、バンベルク交響楽団の後援のもと、第2位に入賞した。


ティーネ・ティング・ヘルセット プロフィール
ノルウェー出身のトランペット奏者ティーン・シング・ヘルセットは、キャリアをスタートさせて以来、6大陸の聴衆にトランペットのレパートリーを広め、そのソウルフルでリリカルなサウンドと音楽作りへのコラボレーション・アプローチで最高の賞賛を集めている。強烈な創造性とオープンマインドな哲学を持ち、ジャンルの境界線に挑戦するアーティストであるティネは、古典派から現代作品、新しい委嘱作品まで、レパートリーを常に拡大し続けている。

 

2013年エコー・クラシック・アワードの「新人賞」、2009年ボルレッティ・ブイトーニ・トラスト・フェローシップ、2006年ユーロビジョン若手音楽家コンクールの第2位など、クラシック音楽の分野で数々の賞を受賞し、2016年のコンクールでは審査員として戻ってきた。2007年には、ノルウェー・グラミー賞(Spellemannprisen)において、クラシック・アーティストとして初めて新人賞を受賞するという稀有な栄誉に浴している。

 

ティネは、バンベルガー・シンフォニカー、NDRエルブフィルハーモニー・ハンブルク、ギュルツェニヒ・オーケストラ・ケルン、トンキュンストラー・オーケストラ・ウィーン、フィルハーモニア管、BBCプロムスのBBCスコットランド管、ワルシャワ、ロッテルダム、オスロ、ベルゲン、ヘルシンキフィル、デンマーク放送交響楽団とスウェーデン放送交響楽団、ロイヤル・ストックホルム・フィル、ボルチモア、シンシナティ交響楽団、シンガポール響、KBS響および香港フィルなど世界一流オーケストラとの共演を果たしています。また、ノルウェー室内管、チューリッヒ室内管、ミュンヘン室内管、フィラデルフィア室内管、オーストラリア室内管、ローザンヌ室内管、モーツァルテウム・ザルツブルグ、香港シンフォニエッタなどの室内管弦楽団との共演も盛んに行っている。

 

20/21シーズンは、ノルウェー・オペラ管弦楽団とケルン国立管弦楽団によるフンメル トランペット協奏曲、アントワープ交響楽団と国立台湾交響楽団によるアルトゥニア トランペット協奏曲、オーデンセ交響楽団によるハイドン トランペット協奏曲などのオーケストラとの共演が予定されています。

 

また、オスロ室内楽フェスティバル、グロッペン音楽祭、ウルティマ音楽祭に復帰し、クリスマス前の特別ツアーでノルウェー全土で50のコンサートを開催します。さらに、2021年3月には、ロンドンのウィグモアホールで待望の再演を果たし、レディングでリサイタルを行う予定である。今シーズンは、ドイツ放送フィルハーモニー・ザールブリュッケン・カイザースラウテルン、ベルリン・コミッシェオーパー、BBCフィルハーモニー管弦楽団、ルツェルンの世界バンドフェスティバル、ワシントンDCのケネディセンターとフロリダのウィンターパークのバッハフェスティバル協会でリサイタルが決定しています。

 

また、女性だけの10人編成の金管アンサンブル「tenThing」を率いて、定期的にツアーを行っている。2007年、親しい音楽仲間との楽しくてエキサイティングなプロジェクトとして始まったこのグループは、ヨーロッパ、アメリカ、中国で多くの聴衆の前で演奏してきた。過去には、BBCプロムス、シュレスヴィヒ・ホルシュタイン、ベートーベン・ボン、グシュタード、MDR Musiksommer、メクレンブルク・フォアポンメルン、ラインガウ、メラノ、チューリンガー・バッハウォッヘン、ブレーメンなどのフェスティバルに出演している。今シーズンは、tenThingがドイツに戻る予定です。

 

2012年、ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニックとアルバム「ストーリーテラー」を録音し、EMIクラシックからリリースされた。2013年3月には、ピアニストのキャサリン・ストットとの共演で、オリジナル作品と書き下ろし作品を収録したセルフ・タイトルのCDをリリースした。

 

オスロ在住で、テレビやラジオの司会者として地域社会で積極的な役割を担っているほか、ノルウェー音楽アカデミーでトランペットの講師を務めている。オールラウンドなミュージシャンである彼女は、ノルウェーを代表するジャズ・バーでも定期的に演奏している。2013年6月、ティネはエドヴァルド・ムンク生誕150周年を記念して、自身のプロジェクト「Tine@Munch」を立ち上げ、レイフ・オヴェ・アンスネス、ニコラ・ベネデッティ、トルルス・モークなどのゲストアーティストと様々なパフォーマンスを繰り広げました。2019年より、リソール室内楽フェスティバルの芸術委員会メンバーを務める。

 


Viewing all articles
Browse latest Browse all 1645

Trending Articles