(10月19日・サントリーホール)
三年半ぶりのカンブルランと読響の演奏。そうそうこの音、という懐かしさを感じる。リズムも構成もきっちりとしていて、音も明るい。ただ日本初演のダルヴァヴィ「チェロと室内管弦楽のための幻想曲集」と最後のリゲティ「ルーマニア舞曲」以外は、音が少し粗くザラザラしていた。盛りだくさんのプログラム(終演は9時半近く)のため、リハーサル時間が充分とれなかったかもしれない。
バルトーク「舞踏組曲」
第2舞曲はパワフルな演奏。正確な音程の弦。第4舞曲はパリ管弦楽団を聴いた翌日なのと、作品の性格から色は少ない。バスクラリネットに味わいあり。第5舞曲は重々しい。終曲の金管は盛り上がった。
ビゼー「交響曲第1番」、第1楽章はとてもまとまりがあり、勢いもある。
第2楽章オーボエのソロ蠣崎のソロは艶々している。ホルン少し不調。中間部のフガートも美しい。第3楽章民族舞曲も堂々としている。中間部のバグパイプ風のチェロのはきれいなアンサンブル。第4楽章は活気があった。
ダルヴァヴィ「チェロと室内管弦楽のための幻想曲集」
休憩後の1曲目。チェロのソロはアンドレイ・イオニーツァ。編成は小さく、フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルン、トランペット、打楽器、ピアノ、チェレスタ、各1人。ヴァイオリン3、ヴィオラ2,チェロ、コントラバス各1人の構成。
独奏チェロを中心に、細分化された楽器が様々に動き、集合し、対決するめまぐるしい作品だが、15分のエンタテインメント的な作品で、カンブルランの指揮はまさに水を得た魚のよう。イオニーツァのチェロが素晴らしく躍動した。アンコールはJ.S.バッハ「無伴奏チェロ組曲第1番プレリュード」。
サン=サーンス「チェロ協奏曲第1番」
イオニーツァのチェロは柔らかく少し大人しい。提示部の最後、フルートに第1主題がでてから、全合奏とチェロが上昇していくところから、イオニーツァの演奏に熱がこもる。展開部はオーケストラともども少し粗い。
第2部アレグレット・コン・モートはオーケストラに細やかなニュアンスがある。チェロの哀愁のある表情が良い。
第3部に入るチェロの低音が豊か。チェロの新しい主題も美しい。コーダ近くのチェロのフラジョレットはさすがにうまい。急速な音形も良く歌う。コーダも豊かな音だが、少しあっさりしていた。
リゲティ「ルーマニア舞曲」
これは初演の作品と並び、今夜最高の演奏だったかもしれない。
第1楽章から、読響の弦は磨き抜かれ、それまでの粗さが嘘のよう。
第2楽章の舞曲もノリノリ。カンブルランが腰を振って指揮する。ピッコロも軽快。
第3楽章アダージョはバルブを使わない自然倍音のホルンがバンダのホルン(舞台下手ドアの裏)と歌い交わす。まさにアルペンホルンのエコー効果。
第4楽章はトランペットの信号音で始まり、弦から動きが活発になり、民族舞踏音楽が始まる。小森谷巧のロマ的ヴァイオリンも冴える。最後はホルンのエコーを再現し、休止をはさみつつ、何度も打ち付けてカッコよくおわった。
カンブルランへのソロ・カーテンコールがあった。
このあと、10月25日(火)19時らサントリーホールで大作ヴァレーズ「アルカナ」や追悼になる、一柳慧「ヴァイオリンと三味線のための二重協奏曲」(世界初演)もある。
10月29日(土)、30日(日)14時からは東京芸術劇場でも公演がある。
ビゼー:付随音楽「アルルの女」第1組曲、第2組曲
ジョリヴェ:トランペット協奏曲第2番 トランペット=セリーナ・オット
フローラン・シュミット:バレエ音楽「サロメの悲劇」