コンサートのハイライトは後半のヴィヴァルディ「四季」全曲。
全員がバロック弓を使うが、適度なヴィブラートをかけるので、音はそれほどきつくない。とはいえ、モダン楽器の「四季」に慣れた耳には、新鮮な演奏。フレーズは短く、切れ込みが鋭い。リズムが強調され、激しい個所では、ロックのような乗りの良さ。ビオンディのソロは時に即興も加える。
イ・ムジチの「四季」がイージーリスニング的だとすれば、ビオンディの「四季」は、刺激的でハードロック的な「四季」とも呼べるかもしれない。
第1番「春」
第1楽章のビオンディとトップサイド、第2ヴァイオリン・トップの3人による鳥のさえずりの模倣は、すさまじかった。元気溢れる鳥たちが声を限りに鳴くようだ。テオルボ(リュートの一種)が味わい深い。
第2楽章の羊飼いが犬のそばで眠りこける情景は、ビオンディが少しヴィブラートをかけ細やかに弾く。ヴィオラのトップが、犬の鳴き声を、ガッ、ガッといった調子で短く激しく弾く。
第3楽章の田園舞曲は、ビオンディが楽員の方を向きトゥッティに加わる。ビオンディのソロがチェロの上で技巧を聴かせた。
第2番「夏」
第1楽章 「焼けつくような太陽に人も家畜もうつうつとしている」というソネット通り、夏にしては暗い雰囲気の楽章。文字通りどんよりと暗めに合奏する。ビオンディとチェロの2重奏のあと、激甚的な北風をチェンバロの上下行する音階とともに激しく表現した。涙を流す羊飼いを表す旋律をチェロとテオルボが甘く奏したあと、最後も激しい北風の描写で終わった。聴きごたえ十分の演奏。
第2楽章 トゥッティが押し寄せるハエの群れをトレモロでリアルに描く。ビオンディが間に雷鳴を激しいソロで描く。
第3楽章 「雷鳴がとどろき、稲妻が走り、あられを降らす」、40小節の激しく長大なトレモロが、スピードを伴い切れ味よく描かれる。ビオンディのソロはヴィルトゥオーソそのもの。最後はうねりが押し寄せるように、終えた。これも最高の聴きどころ。
第3番「秋」
第1楽章 全員で再度チューニングをする。村人たちの素朴な歌と踊り。トゥッティ、ソロ、トゥッティと繰り返されるが、ビオンディは短いフレーズで叩きつけるようにソロを弾く。次の楽章へのブリッジとなる最後は、ビオンディとヴァイオリン2人、ヴィオラが柔らかく弾き、美しい。
第2楽章 酒宴のあと眠りこける村人たち。チェンバロの長いソロが眠気を誘う。弱音器を付けた弦のトゥッティ。ビオンディは指揮のみ。
第3楽章 「夜が明け、狩人たちが狩りに出る」。トゥッティのあと、ビオンディが激しいソロ。短く切るのは、犬の吠える声か。チェロとテオルボがバックで味わい深く弾く。低弦とヴァイオリンのやり取りは銃声かも。
第4番「冬」
第1楽章 冷たい雪の中を歩く人々。8分音符の同音反復がクレッシェンドしていき、雪がどんどん積もるよう。恐ろしい風を表すビオンディはガシガシとソロを弾く。第2ソロはさらに激しく細かく刻む。第3ソロは跳ね弓で歯がガチガチなる音を表した。
第2楽章 これは楽しい。雨音を表すピッツィカートはあまり聞こえてこないが、チェロの六連符がはっきりと刻まれ、まるで大きな時計がチクタク鳴っているよう。ビオンディのソロは流麗。
第3楽章 ビオンディのソロがつるつる滑る氷の上で歩く様子をユーモラスに描く。トゥッティがツルリと滑る場面を巧みに奏した。第2ソロは起き上がって走るさまを描いたあと、テンポが落ちるが、南風が吹いて北風と激しくぶつかる様をビオンディが激しく弾き、最後は、これにておしまい、と言うように、ドーンと強いトゥッティで終えた。
アンコールは下記3曲。
ヴィヴァルディ:「夏」より 第3楽章
ハイドン:ディヴェルティメント ニ長調 Hob.III:D3 より第5楽章
ヴィヴァルディ:「冬」より 第2楽章
「夏」の第3楽章は、本番以上にノリノリで即興も交え、まるでロックのようだった。
前半は、下記3曲が演奏された。
コレッリ:合奏協奏曲 ニ長調 Op.6-4
ジェミニアーニ:合奏協奏曲 ト短調 Op.3-2
ロカテッリ:合奏協奏曲 ニ長調 Op.1-5
いずれも最後のアレグロが覇気と切れ味があり、盛り上がる。ビオンディとエウローパ・ガランテが本領を発揮するのは、アレグロの楽章という共通点が興味深い。