(1月17日・北とぴあ さくらホール)
東京ニューシティ管弦楽団からパシフィックフィルハーモニア東京と改称してから最初のニューイヤーコンサート。飯森範親は挨拶の際、長いので、PPTと読んでください、と略称を伝えていた。
今回はPPTの新しいソロコンサートマスター高木凛々子の御披露目も兼ねており、12年間東京シティ・フィルを率いて来た執行恒宏がトップサイドに座った。この二人の他、
1990年よりライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団コンサートマスターを務めているヘンリック・ホッホシルトが特別首席コンサートマスターに就任することも決まった。
プログラムはヨハン・シュトラウス2世のワルツやポルカを中心に演奏されたが、昨年に続きゲストにソプラノの梅津碧(うめつみどり)が登場し、シュトラウス2世のワルツ「春の声」、モーツァルト「歌劇≪劇場支配人≫よりロンド〈若いあなた〉」、アダン「きらきら星によるブラブーラ」で、華麗なコロラトゥーラを披露した。
アダン「きらきら星によるブラブーラ」が特に素晴らしく。フルートのオブリガートとともに、超絶技巧のコロラトゥーラを連発した。オペラ「闘牛士」の劇中劇でチェンバロとフルートと共に歌われる曲で、歌の最中にチェンバロ奏者から「カデンツァ!」と声がかるとそこから更なる技巧が披露される。今日は飯森が『カデンツァ!』と声を掛けていた。それを受けて梅津がより高度な即興を聴かせた。フルートとの息もぴったり。フルートは泉真由(いずみまゆ)。琉球フィルハーモニックオーケストラ客演首席フルート奏者。桐朋学園大、洗足学園大、東邦音大各講師も務める。
ヨーゼフ・シュトラウス「鍛冶屋のポルカ」ではウクライナのオーケストラの女性の打楽器奏者ビルコーヴァ・イリーナがゲストで登場(他の曲でも打楽器を担当)し、アンヴィルを盛大に叩いた。音が大き過ぎ耳を塞いでちょうど良いくらい。キーウから日本に避難していると飯森が紹介していた。
シュトラウス2世ポルカ「雷鳴と稲妻」では傘を持って飯森が指揮、楽員も何人かが傘を持って踊った。
今日は阪神淡路大震災から28年目にあたる。飯森の祖父の家も全壊したという。祖父は無事だったとのこと。ウクライナの平和と、震災の犠牲者への追悼も込めて最後にシュトラウス2世の「美しく青きドナウ」が演奏され、アンコールはシュトラウス1世の「ラデツキー行進曲」で締めた。
写真©パシフィックフィルハーモニア東京