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Channel: ベイのコンサート日記
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尾高忠明 大阪フィル 驚異的な名演!ブルックナー「交響曲第7番(ハース版)」

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(1月24日・サントリーホール)
ブルックナー「交響曲第7番」は驚異的な名演。徹底的に引き締まり、最初から最後までみっしりと中身の詰まった演奏が維持された。昨年聴いた第5番も素晴らしかったが、あの時以上に堅固で隙がない。何よりも大阪フィルの楽員の集中度が異様なまでに高い。

 

どのパートも良かったが、特にホルンとワーグナーテューバが見事。第2楽章185小節目(練習番号X)からの4本のワーグナーテューバと2本のホルンによる、ブルックナーがワーグナーの死を追悼して書いた葬送の音楽の、柔らかく美しいハーモニーと完璧な音程は、これまで日本のオーケストラで聴いた中では最高の演奏だったのではないだろうか。210小節目からのコーダのハーモニーも同様に素晴らしかった。

 

ヴァイオリン群は鋭角的な張りつめた高音に特徴があり、第2楽章では澄み切った世界を創り出した。チェロは同楽章の第2主題で温かく、柔らかな響きを生み出す。

第2楽章のクライマックス(練習番号W)はハース版のため、シンバルとトライアングルは鳴らされないが(ティンパニは使われた)、金管群の強烈な音があるため、なくとも充分な迫力が出た。

 

迫力と言えば、第3楽章スケルツォは驚くほど強靭。厚みと強さ、切れがある。柔らかなトリオとの対比が鮮やか。

 

終楽章のコーダがまた凄かった。16型の弦のトレモロが金管に負けることなく、文字通り渾身の力で弾かれる中(今回ほど弦のトレモロが前に出てくる演奏も珍しい)、金管、木管、ティンパニが腹の底に重く響く鉄塊の如く重厚な音を叩きこんでくる。その豪快さと強靭さは、総毛立つような震撼と畏怖を聴き手にもたらした。

 

第7番はブルックナーの他の交響曲と同じく、再現部が短くすぐにコーダに入るため、聴き終わった後少し物足りなさが残ることもあるが、尾高&大阪フィルの地の底深く杭を打ち込むような終結部は、そんな不満を一笑に付す絶大な力感があった。

 

強烈なコーダの後も、尾高の両腕は上がったまま。降ろされるまで静寂が保たれたのは昨年同様。盛大な拍手とカーテンコールの中、尾高はホルン、ワーグナーテューバ、トランペット、トロンボーン、テューバの金管に始まり、木管、ティンパニと次々と起立させていく。

 

尾高はいったん拍手を制すると、『井上道義さんと僕は一つ違い(井上1946年、尾高1947年生まれ)。齋藤秀雄先生からしょっちゅう怒られていました。昨日井上さんはここサントリーホールで素晴らしいミュージカル・オペラを指揮しました。そして今日は私と二日続けてこのサントリーホールで指揮しました。齋藤先生もさぞ喜ばれていると思います』と挨拶した。

 

ソロ・カーテンコールになり、尾高はコンサートマスターの須山暢大(すやまのぶひろ)を伴い再登場し、聴衆からの熱いスタンディングオベイションを受けていた。

 

前半は、池辺晋一郎「交響曲第10番《次の時代のために》」(約18分)が演奏された。2015年仙台フィルが委嘱、翌年武満徹没後20年を記念するコンサートで尾高忠明指揮で初演された。

youtube↓に演奏者は異なるが、音源があげられている。
Shin-ichirō Ikebe - Symphony No. 10 “For the Coming Era” (2015) - YouTube

 

緊張感のある力作で、ところどころ池辺が若いころアシスタントを務めた武満徹の音楽も感じさせる。演奏後、尾高は客席で聴いていた池辺を舞台上に呼んだ。


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