サロメ役の出来次第で公演の評価が決まるオペラ。アレクサンドリーナ・ペンダチャンスカ(ソプラノ)は熱演で熱唱だった。ドラマティックな表現力があり、声も前によく出ていた。
R.シュトラウスは『理想とするサロメは、イゾルデの声を持つ、16歳の王女である』と非公式に発言したという(広瀬大介氏のプログラム解説より)。
イゾルデの声ではあったが、16歳の少女を演じるには、イメージ的に少し無理があったかもしれない。
ヨハナーンのトマス・トマソン(バリトン)は、昨年のノット東響との公演で示した通り、威厳のある声とヨカナーンにぴったりの体躯と容姿で、今回も素晴らしかった。
ヘロデのイアン・ストーレイ(テノール)、ヘロディアスのジェニファー・ラーモア(メゾソプラノ)は適役。ストーレイのナイーブな声は少し気弱なヘロデを演じ歌い、傲岸と言うには人柄の良さが出てしまうラーモアのヘロディアスも安定していた。
海外からの歌手陣に比べ、日本の歌手は声の厚みがなく、聴き劣りがしてしまう。
指揮のコンスタンティン・トリンクスはピットの東京フィルから強烈な音を引き出していた。特にホルンが豪快。ただアンサンブルは少し荒く、緻密さという点ではもうひとつだった。
2000年のプレミエ以来7回目の公演となる舞台(【演出】アウグスト・エファーディング【美術・衣裳】ヨルク・ツィンマーマン)は、オリエンタルな大きな天幕風の宮殿と、庭園に大井戸が中央に配置される。兵士たちが剣付きの小銃らしきものを携えていること以外はオーソドックスなものだった。