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Channel: ベイのコンサート日記
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フェスタサマーミューザ 大野和士 都響 久末 航(ピアノ)(7月28日・ミューザ川崎)

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ニールセン:狂詩曲風序曲『フェロー諸島への幻想旅行』

フェロー諸島は、スコットランドのシェトランド諸島およびノルウェー西海岸とアイスランドの間にある北大西洋の諸島。デンマークの自治領だが、時にイギリス領になったこともある。奇しくも明日7月29日が伝統のチェーンダンスの本番とのこと。

youtube↓に映像があった。
オラフ祭のチェーンダンス(フェロー) - YouTube

この作品のなかほどに「踊りと歌」の場面も出でくる。始まりは穏やかな海を表すとのことだが、重厚で少し不気味。哀愁のあるホルン(首席:西條貴人)のソロも味わいがある。最後は少しあっけなく終わる。

 

グリーグ:ピアノ協奏曲 イ短調 Op. 16

久末航(わたる)はこの曲を初めて公開の場で弾くという。
大野和士&都響とも初共演。

久末も大野和士指揮都響もダイナミックな演奏ではあるが、表情、音色がやや一本調子。

第2楽章中間部の抒情的な聴きどころも情感が不足する。
ピアノもオーケストラもただ鳴っているだけのように聞こえてしまう。

第3楽章の中間部の澄みきったフルート(首席:柳原佑介)のような音がピアノからも、オーケストラ全体からも聞こえて来ない。結果として、心に響くものが少ない演奏だった。

ただ、第3楽章のカデンツァ的な部分は生き生きとしたものがあった。

 

久末のアンコールはリスト「《巡礼の年》第1年スイスより第4曲<泉のほとりで>」。グリーグよりも久末に合っていたが、もうひとつ内面に入っていけない。大野は久末のピアノは内面から沸き上がるものがあるピアニストと高く評価していたのだが。

追記:4年前聴いた久末航のリサイタルのレヴューを紹介します。作品により、受ける印象も異なり、素晴らしいところと、もう一つ中に踏み込んでほしいという個所があると書いていました。

紀尾井明日への扉 久末 航 ピアノ・リサイタル (7月31日、紀尾井ホール) | ベイのコンサート日記 (ameblo.jp)

 

シベリウス:交響曲第2番 ニ長調 Op. 43

大野和士のシベリウスの交響曲は珍しい。初めて聴くと思っていたら、2019年に第6番を聴いていた。

その時の感想は今日とほぼ同じだった。

大野和士 東京都交響楽団 武満徹・シベリウス・ラフマニノフ | ベイのコンサート日記 (ameblo.jp)

 

『引き締まった響きはあるものの、北欧の澄み切って冷たい空気感や、自然の風景というイマジネーションがわいてこない。旋律やフレーズを息長く歌うという場面が少なく、常に切迫感に満ちていて落ち着かない。もっとゆったりと構えた、息を深く長くとったスケールの大きな演奏を聴きたいと、欲求不満を募らせる。』

 

今日の第2番はテンポが速めで前のめりが激しく、第1楽章冒頭の木管の第1主題に呼応するホルンの四重奏もゆったりとはしていない。もう少し溜めをつくれば奥行きが出るのにと思ってしまう。また第1楽章から全力でアクセルを踏み金管を鳴らしまくるので、シベリウスらしい、徐々に盛り上がりながら、最後の大団円、カタルシスに至るという構成が霧消してしまう。

 

第2楽章のコントラバスのピッツィカートもボンボンと鳴るだけで、深い意味が伝わってこない。

 

第3楽章の抒情的なレント・エ・スアーヴェ(ゆっくり、しなやかに)のオーボエのソロは、さすがに名手広田智之に任せ、ゆったりとしていたが。

 

ドラマティックな第4楽章のクライマックスも金管の咆哮が音の巨大さのみになっており、場内はブラヴォも出るなど盛り上がっていたが、長く厳しい道程の果ての解放感、精神的な浄化を得るような充足感がわいてこなかった。


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