都響は16型。コンサートマスターは矢部達哉。
レーガー:ベックリンによる4つの音詩 op.128
第1曲「ヴァイオリンを弾く隠者
弦に繊細さが出てとても良かった。同じプルトに弱音器付きとそうでない奏者が交互に座り、響きが複雑になる。矢部達哉のソロが際立つ。
第2曲「波間の戯れ(Im Spiel der Wellen)」
スケルツォ的な曲を大野和士が切れ味鋭く描く。
第3曲「死の島(Die Toteninsel)」
クラリネットのソロが印象的。ともすれば濁りがちな大野都響の強奏もここではギリギリのところで踏みとどまった。残念ながら、コーダのクライマックスではそれが出てしまったが。
第4曲「バッカナール(Bacchanal)
メリハリがあり、叩きこんでいく演奏ではあるが、ここでも強奏の濁った音が気になった。
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第1番 嬰ヘ短調 op.1
協奏曲での都響は14型。
今年はラフマニノフ生誕150年で阪田知樹、プレトニョフがピアノ協奏曲全曲演奏会を開いたが、聴けなかった。この曲を実演で聴くのは初めて。ラフマニノフが19歳で書いたものを、27歳のときに改訂したもの。すでにピアノ協奏曲第3番を作曲しており、内容は充実している。もっと演奏の機会が増えてもいい気がする。
ニコライ・ルガンスキーはこの作品を得意としているらしく、完全に手の内に入った演奏。大野和士都響も万全の演奏で、聴きごたえがあった。
第1楽章からヴィルトゥオーゾぶりを発揮、多彩なタッチと音色で惹きつける。
第2楽章のホルンに始まる序奏に続く、ノクターン風の主題を耽美的にルガンスキーは響かせる。中間部の弦も夢見るように美しく、ピアノが幻想的な雰囲気を醸し出す。
第3楽章の拍子の変化が激しい第1主題をルガンスキーが華麗に弾き分けていく。第2主題は軽快な弾き方。中間部が素晴らしかった。爽やかなヴァイオリンの旋律をルガンスキーが美しく装飾していく。ピアノが受け継いで、ロマンティックに歌い上げた。後半はラフマニノフらしい華麗なテクニックが全開。華やかで壮大なコーダは第3番に負けない興奮の境地。
ぜひまた聴きたい作品だ。
ルガンスキーのアンコールは、ラフマニノフ:前奏曲第1番 嬰ヘ短調 op.23-1。
シューマン:交響曲第4番 ニ短調 op.120(1851年改訂版)
都響は再び16型。
シューマンが初稿の10年後に改訂した1851年版は現在通常よく演奏されるバージョンだ。第1楽章は分厚く滔々と流れていく。大野都響は好調。
第2楽章は柔らかな響きで、中間部の矢部達哉のソロ、オーボエ鷹栖美恵子とチェロの古川展生のデュエットも美しい。
第3楽章スケルツォも厚みがあり、力強い。
第4楽章は序奏から徐々に緊張感高めて主部に入っていく流れが素晴らしかった。
ホルンの斉奏も決まる。コーダも充実。
第4楽章全体について欲を言えば、「生きる喜び」「祭典」のような表情がもう少し出れば更に良かったように思う。
写真©都響