Quantcast
Channel: ベイのコンサート日記
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1645

ファビオ・ルイージ N響 ブルックナー「交響曲第8番」(初稿/1887年)

$
0
0

(9月15日・NHKホール)
ルイージN響は5月のレスピーギ《ローマ三部作》がお国ものだけあり素晴らしかったが、今日のブルックナー「交響曲第8番」はそれに匹敵するか、あるいはさらに上を行く突き抜けた演奏だった。

 

ルイージN響の演奏は悪くないがもうひとつという印象をもつこともこれまであった。2022年9月に首席指揮者に就任してから2年の時を経て、お互いの意思疎通が実を結びつつあることを感じさせた。

 

今日の演奏で印象的だった点は、響きの美しさが際立つこと。イタリアの絹織物の鮮やかな色彩と滑らかな肌触りを思わせるような、あるいはイタリアの抜けるような青い空のような色彩感があり、ヴァイオリンをはじめ弦がほれぼれとする艶のある滑らかな音で魅了する。金管も輝かしく余裕がある。ホルン首席は千葉響の大森啓史がゲスト。木管はオーボエに新日本フィルの神農広樹がゲストで安定している。

 

隅々まで磨き抜かれた美しい音でブルックナーの交響曲を聴く喜びは、ここ最近なかった気がする。と言うよりもひょっとして初めてかもしれない。8番の初稿版は初めて聴く。「色の白い七難を隠す」ということわざがあるが、これだけの美音で聴くと版の違いの違和感も減じられる。

 

初稿と第2稿の違いを驚きと共に聴いた点は、

第1楽章のコーダをpppで静かに終わるのではなくハ長調で
fffでティンパニを轟かせ終わらせる。

第2楽章スケルツォの中間部に違いがあり、トリオにハープがない。

第3楽章アダージョは2度のクライマックスでのシンバルが第2稿では各1回のところ、3回ずつ計6回も鳴らされる。

アダージョ後半もこれまで聴いたことのないヴァイオリンとチェロのフレーズがあり、戸惑った。

終楽章は第2稿と異なり迷路のように入り組んだ構造になっており、なかなかコーダにたどり着けないもどかしさ(面白さかもしれないが)があり、異様に長いと感じた。

 

初稿版の面白さ、発見は確かにあったが、第2稿の流れの明快さ、第4楽章コーダのソーミレドで終わる切れの良さなど、やはり優れていると思わざるを得なかった。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 1645

Trending Articles