(6月19日、日本外国特派員協会)
東京二期会が、フランス国立ラン歌劇場と共同制作する宮本亜門新演出、『金閣寺』(原作:三島由紀夫 作曲:黛敏郎)の制作発表記者会見を行った。
フランスが先で、プレミエは2018年3月、日本では2019年2月に上演。今回の特長の一つは、歌手は公演地により変わることが多い中、東京二期会所属歌手二人、嘉目真木子(よしめまきこ)と、志村文彦(しむらふにひこ)が、日仏両プレミエに出演することだ。中山欽吾東京二期会理事長は、今後も共同制作、提携作品を通して二期会専属歌手を世界に送り出したい、と語った。
山口毅(つよし)東京二期会事務局長は、毎年来るほど日本通で、日本の文化、日本のオペラを紹介したいと考えているラン歌劇場総支配人エヴァ・クライニッツと10年くらい前から話し合っており、2年ほど前に『金閣寺』に落ち着いた。彼女は宮本が演出した2013年リンツ州立歌劇場のモーツァルト「魔笛」をはじめ、彼の演出をいくつか見ており、またすでに対面しており、今回はぜひ宮本亜門にということになった、と語った。
宮本亜門は、『金閣寺』は神奈川芸術劇場<KAAT>の演劇として演出経験もあり、1995年に『金閣寺』のCDを買って聴きこんで以来、ぜひオペラ『金閣寺』の演出はやりたいと思っていた。黛敏郎の音楽はストラヴィンスキー、ラヴェルと並ぶ。演出コンセプトとしては、芝居の時は人物を『金閣寺』としたが、今回は使わない。また建物としての『金閣寺』は舞台上に出さず、溝口の深層心理を描いていきたい。光や闇、セットが圧迫、呼吸するようなイメージを持っている、と語った。
出演歌手、嘉目真木子は、留学先はイタリアでフランスは初めてなので楽しみ。2015年神奈川県民ホールでのオペラ『金閣寺』では「有為子」役で出た。全体を通し、闇を感じる。女性が虐げられているように思うが、溝口の闇を表現するための人物として表現したい。一番好きな場面は、ソリストの九重唱。金閣寺を燃やす心情を表現するにはなくてはならないシーン。今回は「女」役だが、最初に登場する時は歌がなく、兵士に乳を搾って飲ませるシーン。音楽が美しく神秘的。宮本さんがどう演出されるのか楽しみです、と語った。
ベルリン・ドイツ・オペラ委嘱で作曲。1976年同劇場で初演された『金閣寺』。三島由紀夫の作品をこよなく愛し、黛敏郎『金閣寺』の虜にもなっている宮本亜門による上演が、フランスでいかに受け入れられるか、評価がどう出るか、期待したい。
『金閣寺』 フランス公演
オペラ全3幕 ドイツ語上演
原作:三島由紀夫 台本:クラウス・H・ヘンネブルク 作曲:黛敏郎
演出:宮本亜門 指揮:ポール・ダニエル 管弦楽:ストラスブール・フィルハーモニー管弦楽団
日程:フランス国立ラン歌劇場・ストラスブール公演《2018年3月21,24,27,29日、4月3日》
フランス国立ラン歌劇場・ミュルーズ公演《2018年4月13,15日》
日本公演の指揮者は、マキシム・パスカル。
志村文彦は、道詮和尚役。