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Channel: ベイのコンサート日記
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鈴木雅明 新日本フィルハーモニー交響楽団 メンデルスゾーン「交響曲第5番《宗教改革》」

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メンデルスゾーン「交響曲第5番《宗教改革》」は名演。14型対向配置。ほぼノンヴィブラート。明晰な響き。引き締まった堅固な構造、骨格がしっかりとしている。

 第1楽章のドレスデンアーメンの弦楽器の旋律から、宗教的崇高さ、敬虔さがあり、その後、激しい緊張感がある演奏が展開された。第2楽章スケルツォの伸びやかな歌も美しい。第3楽章の感情豊かな表現には、適度なロマン性がこめられる。

 

今回は、1830年に初演される予定だった初稿スコアに基づいたベーレンライター版のスコアを使用。第4楽章にフルートのソロから始まる経過句が追加されたが、ここでのフルート白尾彰のソロが実に温かく味わいがあった。

話はそれるが、隣にみえた音楽評論家の宮沢昭男さんから教えていただいたのだが、白尾さんのフルートは、フランスのヴィンテージ・フルート「ルイ・ロット」とのこと。1855年から1951年までは製造があったが、現在は工房も閉じられてしまった。フルート専門のサイトで調べたところ、その音の特長は、現代の感覚ではおとなしく上品で特にピアニッシモが美しいという。

 確かに、白尾さんの音はいつも上品で、正直言うと、もっと前面に出てもいいのではと思ったこともあったが、理由を知って納得した。現代のフルートにはない雅な音は、余人をもって替えがたいということだろう。

 

5楽章でフルートをはじめ管楽器がルター作曲のコラール「神はわがやぐら」を奏し、テンポを速め、最後は金管が輝かしくコラールを斉奏して壮大に締めくくった。

 

1曲目ブラームス「悲劇的序曲」冒頭の劇的な和音は切れ味が鋭く、全体に緊張感が持続していた。

ハイドン「交響曲第104番《ロンドン》」は、10型に減らした編成、完全にノンヴィブラートの明快な演奏。一点一画もおろそかにしない、精緻で厳格なハイドンとも言える。先日聴いたマルクス・シュテンツの自由闊達な演奏もとてもよかったが、鈴木雅明のハイドンには、有無を言わせぬ、説き伏せられるような説得力があった。

 

写真:鈴木雅明(cMarco Borggreve 

 

 


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