(2月16日、サントリーホール)
チャイコフスキー「幻想曲《フランチェスカ・ダ・リミニ》」は、先週のラフマニノフ「交響曲第2番」よりも、アンサンブルが良くなっていた。また、チェロ群がいい音を出していた。スケールの大きい演奏。
2曲目のラフマニノフ《パガニーニの主題のよる狂詩曲》は、ルガンスキーが先週に続き登場。第14変奏の華々しいピアノに魅了される。第18変奏は甘さを抑えた硬派な表現。第22変奏からコーダまでの集中力が素晴らしかった。テミルカーノフ読響もダイナミックなバックをつける。アンコールはラフマニノフ前奏曲32-5」。叙情性豊か。ただ、激しい打鍵の直後で、ピアノの調律に違和感が生じていたようで、ルガンスキーには気の毒だった。
テミルカーノフのラヴェルとレスピーギは初めて聴く。ロシアもの以外でどういう音楽を聴かせるのか、興味津々だった。
結論から言うと、正攻法で素直な演奏。ラヴェル《クープランの墓》第1、第2曲は手探りのような慎重な演奏でスタートし、どういう方向に音楽を持っていくのか、わからないところもあったが、第3曲「メヌエット」は色彩感があり、第4曲「リゴードン」ではそこに華やかさも加わった。
レスピーギ《ローマの松》は、1曲1曲細部まで目配りが効いている。「ボルゲーゼ荘の松」の明るい色彩、「カタコンブ付近の松」の静謐な響き、「ジャニコロの松」の幻想的な表情。ここでの鳥の声の録音は、とても自然な再生だった。「アッピア街道の松」は、もっと派手な演奏を期待していたが、節度を保ちつつ、輝かしい金管を生かしていた。バンダの金管はオルガンの左右出入り口付近に、下手にトランペット4本、上手にトロンボーン2本が配置されていた。
写真:ユーリ・テミルカーノフ(c)ジャパンアーツ、ニコライ・ルガンスキー(c)Caroline Doutre