寺神戸 亮(てらかべりょう:ヴァイオリン)、迫間 野百合(はざま のゆり:ヴァイオリン)、原田 陽(はらだあきら:ヴィオラ)、懸田貴嗣(かけたたかし:チェロ)が出演。オリジナル楽器にガット弦。弓は寺神戸がモダン、他の三人はバロック弓を使用。ヴィブラートは適宜かけていた。
プログラムは「弦楽四重奏曲K.458《狩》」と「ディヴェルティメントK563」。寺神戸が演奏者からのメッセージとしてプログラムに「オリジナル楽器でのこれらの曲の演奏は珍しく、ガット弦による純粋で温かな音色をお楽しみください」と書いているが、実際に、寺神戸のヴァイオリンはどこまでも艶やかで美しく、いつまでも聴いていたいと思わせる。
寺神戸は音楽性が豊かで存在感が大きく、迫間、原田、懸田は先生についていく生徒のようにも見えるが、一方で寺神戸が示す大きな世界の中で、三人が自由に羽ばたいているようにも思えた。《狩》では迫間が積極的に仕掛けていく場面もあった。
「ディヴェルティメントK563」は迫間が抜けた三重奏。シンプルな作品のように見えるが、40分以上の大作。奏者が三人であり、構造が見通せるので、奏者にはアンサンブルの精度が求められる難しい作品とも言える。第4楽章の変奏では、ヴィオラの原田が健闘した。第6楽章はロンド。中間あたりの展開部分は複雑にできている。寺神戸、原田、懸田は素晴らしい合奏を聴かせた。
写真:寺神戸 亮(c)Tadahiro Nagata