(3月26日、すみだトリフォニーホール)
上岡敏之が新日本フィルの音楽監督になって3年目を迎えるシーズン。最近新日本フィルの音は変わりつつあると実感している一人として期待は大きい。
新日本フィルの定期演奏会の柱は3本ある。今日の記者会見でもその特長と、今年の方針が専務理事の横山利夫氏と、上岡本人から説明されたので、主なプログラムとともに紹介したい。
「トパーズ トリフォニー・シリーズ」
本拠地でのコンサート。(金)19時と(土)14時の2回。上岡は色で言うとグレー系だという。新日本フィルの音を追求するシリーズ。
2018年9月R.シュトラウスプロ(上岡)、10月シベリウスとリンドベルイ「タイム・イン・フライト」日本初演(ハンヌ・リントゥ)、2019年2月ブルックナー交響曲第5番(マルク・アルブレヒト)、シューマン・プロ(フィリップ・ヘレヴェッヘ)が目を惹く。来年7月のリクエスト・コンサートはラフマニノフのピアノ協奏曲第2番とチャイコフスキー交響曲第5番を上岡が指揮。
「ジェイド サントリーホール・シリーズ」
華やかさと合唱も入った大曲を演奏。横浜みなとみらい 大ホールでも同プログラムで公演(サファイア)。
2018年10月ブルックナー交響曲第9番、テ・デウム(上岡)、2019年3月マーラー交響曲第2番「復活」(上岡)、7月ブラームス「ドイツ・レクイエム」(ベルトラン・ド・ビリー)などが予定されている。
「ルビー アフタヌーン・コンサート・シリーズ」
かつての「新・クラシックの扉」は名曲中心だったが、このところ現代音楽を入れたり、新しい試みも見られる。プレス関係者からは「マニアック過ぎるのでは?」という質問が出たほど。横山氏は「名曲の枠を広げるため」と答えていた。ただ、実際には来シーズンはそうした曲は、2018年11月の武満徹「夢の時」、1月のベリオ編曲ブラームス「ヴィオラ・ソナタ第1番(管弦楽版)」くらいしか見当たらない。
女性指揮者の登用も柱とする。2019年2月ハイドン「四季」はスウェーデン出身の合唱指揮者ソフィ・イェアンニンと、日本でも人気のアロンドラ・デ・ラ・パーラが7月にヒナステラとファリャを指揮する。6月の井上道義のオール・ショスタコーヴィチ・プログラム(交響曲第5番ほか)も楽しみ。
プレスから上岡敏之への質問として「新日本フィルの音は変わってきているのか?」があったが、上岡は「子供の成長と同じでよくわからない。ただ何度もやっている曲もびっしり詰めてリハーサルする。例えば先日のチャイコフスキー《悲愴》のように。」と答えた。コンサートマスターの崔(チェ)文洙も、質問が出る前に「新日本フィルの音はこの1年半で変わってきている」と発言していた。
他に、新日本フィルの楽員の世代交代についての質問があったが、上岡は「年齢だけでは判断できない。個人差が大きい。」との答え。続けて「首席が空いているポストがあるが、いい奏者を獲得できるまでじっくり待ちたい。世界的に技術の低下がある。なかなか見つけるのが難しい。新しくコントラバス2人、トランペットの首席、チェロにアメリカ人も含め2人採用した。」と述べた。
新日本フィルの定期会員から上岡への質問として、「新たな挑戦は何でしょうか?」が司会者により紹介された。上岡は「自分は花火を打ち上げるタイプではない。楽譜を読む作業を地道に続けたときに発見したことがあればそれが新たな挑戦ということになる」という明快な答えだった。
会見の冒頭、新日本フィル理事長の宮内義彦氏(オリックス〈株〉シニア・チェアマン)が、「上岡さんは純粋。愚直に立ち向かう。私は音楽の素人だが重要だと思う」と挨拶した。その言葉通り、上岡敏之と新日本フィルは、来季も愚直に、ひたむきに、新日本フィルにしかできない音を目指して進むことだろう。
2018/2019シーズン ラインナップについては、下記サイトのpdfをご覧ください。
https://www.njp.or.jp/news/3703