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Channel: ベイのコンサート日記
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アジス・ショハキモフ 読響 ガブリエラ・モンテーロ(ピアノ)

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429日、東京芸術劇場コンサートホール)
 29歳の指揮者アジス・ショハキモフが読響の力を100%引き出したのは見事。爽快で、気持ちのいいコンサートになった。

 ムソルグスキー(リムスキー=コルサコフ編)「交響詩《はげ山の一夜》」は、切れ味のある指揮でコーダの木管やハープの弱音もしっかりと聴かせた。ただ音楽の奥行きはあまりないという印象。

 

 ガブリエラ・モンテーロとのラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」は、文字通りゴージャスな演奏になった。モンテーロは先週武蔵野市民文化会館小ホールでリサイタルを聴いたばかり。その時は少し粗く単調に感じたが、協奏曲では彼女の良い面が出た。無理に鍵盤を叩きつけることなくピアノを効率的にしっかりと鳴らし、オーケストラに負けない音を作ることができるモンテーロ。音色は明るめだが、強靭な響きはラフマニノフにも合っている。

 

 ショハキモフの指揮も緻密で、読響から分厚く目の詰まった重い音を引き出す。また弦からも美しく磨き抜かれた音を創り出した。

 第1楽章の再現部マエストーソは聴きごたえ充分。二人で決めたのだろうか、ショハキモフと読響はテンポを思い切って落として第1主題を重厚に鳴らし、その上にモンテーロのピアノが大きな弧を描くように乗っていく。ハリウッド映画を思わせる豪華絢爛な演奏は聴きごたえ充分だった。ホルンの日橋辰朗による第2主題のソロも素晴らしい。
 第2楽章のモンテーロの速いパッセージも鮮やか。第3楽章コーダでのラフマニノフの名旋律が奏でられるクライマックスも、ショハキモフ、モンテーロ、読響の力が結集して壮大な頂点を築いた。

 

 盛大な拍手の中、三度目のカーテンコールにモンテーロは通訳とともに現れ、武蔵野で行ったように、客席に向かって「どなたか心に響く日本の歌を歌ってください。即興のテーマにします」と問いかけた。今回は滝廉太郎作曲(武島羽衣作詞)の「花」(春のうららの隅田川)が男性と女性から歌われたが、モンテーロが(のぼりくだりの 船人が)の部分を聴き取れないためコンサートマスター林悠介と小森谷巧がヴァイオリンで弾いた。モンテーロはその旋律にバッハ風のアレンジを加え即興で美しく弾いた。客席はもちろん大喝采。

 

 チャイコフスキー「交響曲第5番」も、29歳の若さによる勢いとともに、緻密な音作りが印象的だ。音に切れがあり、重厚。読響のパワーをとことん引き出す。金管は鳴らし過ぎと思うこともあったが、奏者たちも気持ちいいくらいに吹くので、楽しさが勝る。ここでも日橋のホルンが飛びぬけた出来栄え。オーボエには、東響の荒木奏美が入っていた。

 読響の弦も好調を維持して、チャイコフスキーもよく鳴っていた。音楽的に、もう少し陰影や、憂愁、あるいは悩みと言った内面的な表情もほしいところだが、ショハキモフの溌剌とした指揮の良さに惹かれるところが多い。読響を完璧にまとめあげる手腕だけでも、彼の才能がよくわかるというものだ。

 ショハキモフには、今後経験を重ねて、音楽的な深みをさらに増していってほしいとエールを送りたい。

 ショハキモフは1988年ウズベキスタン生まれ。同地のウズベキスタン国立響首席指揮者。ミラノ・ヴェルディ響の首席客演、ライン・ドイツオペラの第1指揮者でもある。

 



 


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