(11月24日、東京芸術劇場コンサートホール)
ステージに颯爽と登場した知的な風貌のネトビル。指揮はダイナミックで切れ味がある。音楽の構造ががっしりとしている。オペラとコンサートの両方で活躍しており、作品の様式に合わせ演奏の表情を変える柔軟性もある。2002年ショルティ国際指揮者コンクール優勝の逸材だ。チェコ出身で、プラハ国民劇場、エステート劇場の音楽監督も歴任した。
1曲目のモーツァルト「《歌劇《ドン・ジョヴァンニ》序曲」。冒頭のニ短調の和音は、ティンパニ、金管を強烈に鳴らし、衝撃的に始まる。テンポが上がると、躍動感があり、オペラの開始の高揚感があふれる。
2曲目も初演のプラハにちなんだモーツァルト「交響曲第38番《プラハ》」。最初の《ドン・ジョヴァンニ》序曲の延長線上にあるような躍動感に満ちた演奏だったが、緩徐部分や全体の響きにもう少し細やかなニュアンスもあると良いと思った。
後半はフランスの名ピアニスト、アレクサンドル・タローを迎えてのプーランク「ピアノ協奏曲」。前半のモーツァルトとはがらりと様式感を変え、柔らかく繊細な響きを読響から引き出すネトビルの腕はさすがだ。
タローのピアノはまさにプーランクにうってつけ。弾むような明るい音色、キラキラと輝く色彩感、次々に表情を変えていく曲想を楽しそうに弾き分けていく。聴いている側がウキウキとして幸福な気分になるようなピアノだ。
タローのアンコール、ラモー「新クラヴサン曲集から《未開人》」は、軽やかに華やかな響き。次のタローのリサイタルにはぜひ行きたいと思う。
ヤナーチェク「シンフォニエッタ」では、バンダの金管(トランペット9、バス・トランペット2、テナーテューバ2)が、頭ではやや不安定だったが、最後のフィナーレで大熱演。ネトビル読響の熱い演奏とともに、大きな盛り上がりをつくっていた。
ショルティ国際指揮者コンクールの優勝者や入賞者をここ1年で三人聴いたことになる。昨年4月読響を指揮したアジス・ショハキモフ、今年9月神奈川フィルを指揮したユージン・ツィガーンもそうだ。年度はわからないが、ショハキモフは入賞、ツィガーンは第2位だった。ネトビル、ショハキモフ、ツィガーンに共通するのは、思い切りのよい切れ味の鋭い指揮。これはショルティ自身の指揮と似ている。ショルティの名前を冠するコンクールの性格なのかもしれない。