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Channel: ベイのコンサート日記
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エマニュエル・チェクナヴォリアン ヴァイオリン・リサイタル(12月1日、白寿ホール)

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今年24歳のエマニュエル・チェクナヴォリアンは、アルメニアの指揮者ロリス・チェクナヴォリアンの息子としてウィーンに生まれ、ウィーン国立音楽大学に通い、アルバン・ベルク弦楽四重奏団のゲルハルト・シュルツに学んだ。2015年シベリウス国際ヴァイオリン・コンクール第2位、ベスト・シベリウス演奏賞も受賞、注目を浴びた。
 

 チェクナヴォリアンは、若々しく力強いヴァイオリンを弾く。ベアーズ国際ヴァイオリン協会から貸与された1698年製ストラディヴァリウスの艶やかな美音も駆使する。ただ表現力はそれほど深くない。

 

 バッハのヴァイオリン・ソナタ第3番は、様式感はあるものの、音楽が流れていくだけで、弾むような躍動感や格調の高さがあまり感じられない。ピアノのマリオ・ヘリングも滑らかに弾いていくが、二人はもう少し緊密にやりとりして欲しい。

 

 ベートーヴェン「ヴァイオリン・ソナタ第5番《春》」も、同じようにさらさらと流れていく。第3、第4楽章の激しい部分でのチェクナヴォリアンは、技術的には安定しているが、言いたいことが余り伝わってこない。勢いはあるが、作品の内面にもっと踏み込んでもいいのでは、と少しじれったい。

 

 後半のブラームス「ヴァイオリン・ソナタ第3番」が、この日一番良かった。ブラームスの渋さが良く出ていた。第2楽章アダージョでは情感があり、激しく情熱的な第4楽章も、チェクナヴォリアンの少し粗削りなヴァイオリンによく合っていた。

 

 シューベルトの幻想曲は、溌剌として、チェクナヴォリアンと作品が良く調和していた。ピアノのマリオ・ヘリングも、良く弾きこまれたピアノで、チェクナヴォリアンとの一体感は充分。ヘリングは母が日本人、父はドイツ人。アンコールのクライスラー《愛の悲しみ》《愛の喜び》は、自然な日本語で紹介していた。

 

 NHKのテレビ収録が入っていたので、BSクラシック倶楽部で近く放送される予定。


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