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Channel: ベイのコンサート日記
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アンドレア・バッティストーニ 東京フィル 阪田知樹(ピアノ)(1月24日・サントリーホール)

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ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第3番」を弾いた阪田知樹(さかたともき)にはがっかりした。こんな平板なピアノを弾くとは。3年前、同じく東京フィルに登場した時は、『今日は阪田知樹という素晴らしいピアニストを聴けたことが、最大の収穫だった。最近聴いた日本の若手ピアニストの中では、最も感銘を受けた。リストのピアノ協奏曲第1番はヴィルトゥオーゾを感じさせる演奏だった。完璧なテクニックとともに、風格があってスケールが大きい。』と絶賛したのに、何があったのだろう。

アンコールのラフマニノフ《ヴォカリーズ》も音が薄く、ただ鳴っているだけだった。このレベルのピアニストではないはずだ。奮起を期待したい。

バッティストーニ&東京フィルもさえない。クライマックスだけは、強烈に鳴らすが、それまでの音楽と繋がらないため、唐突に感じた。

 

後半のベルリオーズ《幻想交響曲》は、バッティストーニの新鮮な解釈を聴くことができた。第1楽章「夢・情熱」は、これはという特徴はなかったが、第2楽章「舞踏会」のワルツのリズムと、旋律の歌わせ方は洗練されていた。バッティストーニがオペラで舞踏音楽に慣れていることと、ダンスの機会が多いヨーロッパ人であるためだろう。

第3楽章「野の情景」の後半はテンポが遅い。こんなにゆっくりと進む演奏はあまり聴いた記憶がない。繊細な弱音も新鮮。このテンポと表情を決めたバッティストーニの意図を知りたいと思う。

第4楽章「断頭台への行進」は、このくらいはやるだろうという予想の範囲内だったが、金管の輝きはバッティストーニならでは。第5楽章「サバトの夜の夢」はテンポの緩急の変化が大きく、スケールの大きな演奏だった。

 

バッティストーニのコンサートを数多く聴くうちに、かれの手の内が事前に予想できるようになってきた。一気に人気が出ただけに、飽きられるのも早いのでは、という危惧も抱く。初めて聴いた時のような衝撃を常に与え続けてほしい、というのは弱冠33歳のバッティストーニに対して求めすぎかもしれないが、今後も色々なことにチャレンジしてさらに指揮の腕を高めてほしい。
  

しかし、オペラでの積極的な活動は素晴らしい。2018年のボーイト《メフィストーフェレ》、2015年ヴェルディ《トゥーランドット》など、いずれも大成功だった。今年も9月の東京フィル定期演奏会で、リッカルド・ザンドナーイの歌劇《フランチェスカ・ダ・リミニ》の演奏会形式に挑むので楽しみにしたい。

 




 


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