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Channel: ベイのコンサート日記
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読響サマーフェスティバル2020 《三大協奏曲》 (8月22日・サントリーホール)

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●太田 弦(指揮)、戸澤采紀(ヴァイオリン)、佐藤晴真(チェロ)、辻井伸行(ピアノ)

●メンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲」、ドヴォルザーク「チェロ協奏曲」、チャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番」

若くフレッシュなアーティストによる《三大協奏曲》。

メンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲」を弾いた戸澤采紀は、東京シティ・フィルコンサートマスター戸澤哲夫さんのお嬢さんでもある。第85回日本音楽コンクールで最年少優勝。現在藝大に宗次徳二(宗次ホールオーナー)特別奨学生として在学中。読響とは初共演。

 

第1楽章カデンツァで戸澤采紀の実力が伺えた。正確な音程、構えの大きなフレージング、成熟した表情は堂々としていた。全体に緩徐部分の方が音楽を深く表現できていた。


戸澤はオーケストラとの共演回数はまだそれほど多くないのか、自分が主役であるという押し出しがやや控え目に感じた。

その要因は太田 弦の指揮にもあるかもしれない。太田はフェイスシールドをつけて指揮したが、1曲目でエンジンがかかってないのか、無難なバックではあるが、戸澤と丁々発止のやりとりを交わすまでに至っていないようにも思えた。コンサートマスターは19日と同じく長原幸太。
ただ戸澤も太田もロマン派屈指の美しい作品ということで、優美さに重点を置いた可能性もある。

 

 

ドヴォルザーク「チェロ協奏曲」のソリスト佐藤晴真は2019年難関のミュンヘン国際音楽コンクールチェロ部門で日本人として初めて優勝、現在ベルリン芸術大学で学んでいる。彼も読響初登場となる。

 

佐藤の演奏は「完璧」の一言。正確な音程、楽章ごとの性格の描き分けなど、どこにも欠点が見えない。第1楽章展開部最後の上行半音階や、第3楽章終結部の雄大なソロも素晴らしかった。

小澤征爾がチェリストの宮田大に、『もっと汚いものも出せ』とアドバイスしていた録画を見たことがあるが、欲を言えば、佐藤にも、ドヴォルザークの民族性を出すため、もう少し泥臭い荒々しさも出してほしいと思った。

太田&読響は熱気がこもり、激しさと繊細さのメリハリがあり、木管やホルンのソロもなかなか良かった。
 

休憩後トリを務めた辻井伸行は、ヴィルトゥオーゾと呼びたいスケールの大きな演奏を聴かせた。
辻井の弾く、チャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番」は2012年小林研一郎&読響、2019年ヴァシリー・ペトレンコ&ロイヤル・リヴァプール・フィル以来三度目となるが、昨年聴いたときは、その成長ぶりに驚いた。

第1楽章では大音量で迫る読響に対して、まったく負けていない堂々とした演奏を繰り広げた。長大なカデンツァの高音部もとても美しい。読響のホルントップは日橋辰朗に代わり、冒頭から素晴らしい演奏を披露していた。

辻井伸行ファンが大勢詰めかけたのか、女性が目立つ聴衆の辻井への拍手も盛大だった。

 

辻井伸行:ⓒYuji Hori 佐藤晴真:ⓒTomoko Hidaki  
太田弦:ⓒai ueda

 

 


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