プログラム:シェーンベルク「浄められた夜」、ヴァンハル「コントラバス協奏曲」
ハイドン「交響曲第104番 《ロンドン》」
「浄められた夜」では、秋山の正確な棒に新日本フィルは緻密なアンサンブルで応える。10型両翼配置で、コントラバスは正面に3人。コンサートマスターは、崔(チェ)文洙。チェロの客演首席に東京フィルの渡邉辰紀が入っており、ソロも良かった。
新日本フィルの弦は、いつもながら柔らかく美しいが、この作品のクライマックスは、もう少し強靭さが欲しい。ただ、暗から明への転換と、コーダの風がそよぐような第2ヴァイオリンの動きは繊細さがあった。
ヨハン・バプティスト・ヴァンハル(1739~1813)はボヘミアの作曲家。ハイドン(第1ヴァイオリン)、ディッタースドルフ(第2ヴァイオリン)、モーツァルト(ヴィオラ)、ヴァンハル(チェロ)が一緒に弦楽四重奏曲を演奏したという逸話が残っているそうだ。
コントラバス協奏曲のソリストは、首席の菅沼希望(のぞみ)。ハイポジションの高音が多く難しいこの曲を立派に弾いた。3つの楽章ごとにあるカデンツァも見事だった。
曲はこの映像にあるように、爽やかで明るい。
https://www.youtube.com/watch?v=sxnXMT7-9LQ
ハイドン「交響曲第104番《ロンドン》」は、素晴らしかった。新日本フィルには、朝比奈隆とカザルスポールで行ったハイドン交響曲全曲ツィクルスのDNAが維持されており、新日本フィルの上品な弦の響き、柔らかな木管という長所が最高度に発揮される。
秋山の指揮は、先日のフェスタサマーミューザでの《田園》《運命》の名演以来、注目しているが、今日の指揮も、第1楽章の重厚なニ短調の序奏から堂々としており、二長調の主題に流れるように入っていく。展開部も引き締まって充実している。
第2楽章は秋山が流麗で新日本フィルの弦から艶やかな音を引き出す。
第3楽章メヌエットで時々挿入される休止は、もう少しユーモラスにしてもいいと思うが、秋山は真面目にきっちり繰り返していく。トリオはほのぼのとした味わい。
終楽章の爆発的で生き生きとした演奏は、後のベートーヴェンの交響曲の最終楽章を思わせ、この作品がハイドンの最高傑作のひとつであることを納得させる勢いと集中力があった。