プログラム
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61
ベートーヴェン:交響曲第6番 ヘ長調 作品68 「田園」
ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は若武者、郷古廉による男性的で剛毅な演奏。切れの良い、強靭なヴァイオリン。歌うべきところは艶やかに歌い、繊細さもある。
郷古の演奏は求道的でもあり、どこか人を寄せ付けない雰囲気もあるが、今日の演奏は、この作品の理想的な演奏のひとつに思える。聴き終わって、清々しい気持ちになった。
第1楽章のカデンツァは、ソロと弦楽のやり取りがはさまれる初めて聴くもの。ブゾーニ作とのこと。
第2楽章中間部は、ピンと張った伸びの良い音で、細やかに装飾され、その美しさに陶然となった。
鈴木優人の指揮は、力感に満ちていた。最初の管弦楽だけの前奏は、出だしを聴いて鳴らしすぎではと思ったが、郷古のソロとバランスをとりながら、ぴったりとつけて行った。結果的に郷古の力強さと良く合っていた。
郷古への聴衆、楽員からの拍手は盛大で、鈴木優人も椅子を持ち出し、アンコールを促した。アンコールの曲は現時点では不明。バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータの中の曲のようで、少し違う印象。わかり次第追記します。
後半の《田園》は、鈴木優人のバッハ・コレギウム・ジャパンでの活躍から、古楽的なノンヴィブラートの演奏を予想したが、ごくオーソドックスな解釈だった。
オーケストラは12型の対向配置で、コントラバスとチェロを下手に置いた。
コンサートマスターは、長原幸太。
演奏は、活気に溢れ、生命力がみなぎり、第2楽章は温かな演奏になっていた。
ただ、分厚い響きは充実していたが、各パートの分離がいまひとつで、強奏では音の混濁をもたらしたように思えた。私の個人的な好みの構造がすっきりと見通せる明快な演奏を期待していたので、少し残念だった。
鈴木優人©Marco Borggreve