Quantcast
Channel: ベイのコンサート日記
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1645

小泉和裕 東京都交響楽団 オネゲル《典礼風》、フォーレ《レクイエム》 サントリーホール

$
0
0

(6月1日・サントリーホール)

指揮/小泉和裕

ソプラノ/中村恵理

バリトン/加耒 徹

合唱/新国立劇場合唱団


小泉和裕はオネゲルもフォーレも暗譜で指揮した。

オネゲル「交響曲第3番《典礼風》」は小泉の指揮が絶好調。

都響から輝かしく力がみなぎる響きを引き出し、第1楽章の破壊的エネルギーや、対照的な第2楽章の静謐さなどを余すところなく表現した。

弦の艶のある音はいつも都響で聴けるものではなく、小泉の指揮ならではの磨き抜かれた響きだった。

第2楽章と第3楽章のクライマックスでは小泉が全身を使って、渾身の最強音を聴かせた。第3楽章では、強音から急速に静まるアダージョのコーダへの転換が鮮やかだった。最後に鳥が平和な歌を歌うフルートとピッコロのソロが美しく痛切だった。

 

フォーレ:レクイエム op.48

新国立劇場合唱団(合唱指揮:冨平恭平)が素晴らしかった。
P席に左右を空けて立つ40名(女声23、男声17)の合唱は完璧な音程と発音、透明感のあるハーモニーで魅了した。間を空けて歌うことで、かえって透明感が増したと思う。

特に「サンクトゥス」の天国的な合唱が美しい。また、第5曲「アニュス・デイ」の「主よ、永遠の光で彼らを照らしてください」と歌う女声合唱は、天から光が降り注ぐように高貴な品があった。
 

都響はヴァイオリン14、ヴィオラ12、チェロ8、コントラバス6の編成。

小泉はやや遅めのテンポをとり、教会に響くような豊かな響きを都響と共に創り上げた。


第1曲「イントロイトゥス」、第2曲「オッフェルトリウム」は重みのある響きで荘重に描く。第3曲「サンクトゥス」のホルンから始まる劇的な部分や、第6曲「リベラ・メ」の怒りの日では壮大な響きで表現し、フォーレだからといって、激しさを抑えることはなかった。

 

一方で、第3曲「サンクトゥス」冒頭のハープとヴィオラの分散和音は、天上世界を思わせ、終曲「イン・パラディウム」の静謐さは感動的だった。

 

「ピエイエス」でのソプラノの中村恵里のヴィブラートが少ない硬質な声は透明感があるが、天国的なやすらぎとしては高音に少し力みが感じられた。

加耒徹もヴィブラートを抑えた声で作品に適う歌唱で安定感があった。

 

雄大な《レクイエム》だが、作品が持つ静謐性や安寧な雰囲気が横溢しており、感銘深い演奏となった。

 

ひとつだけ気になったのは、演奏後ソリスト二人をステージ奥に残したまま、小泉が先に舞台袖に戻ってしまったこと。中村と加耒が指揮台近くで歌っていたら忘れることもなかっただろうが、ついうっかりしたのかもしれない。


写真©東京都交響楽団


Viewing all articles
Browse latest Browse all 1645

Trending Articles