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Channel: ベイのコンサート日記
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ヒラリー・ハーン ヴァイオリン・リサイタル アンドレアス・ヘフリガー(ピアノ)

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(6月5日・東京オペラシティ)
ベートーヴェン「ヴァイオリン・ソナタ第9番《クロイツェル》」

ハーンは安定感抜群。一番良かったのは第1楽章展開部から再現部。天馬空を行くが如く、あるいは大きく翼を広げて天高く上昇していくような高揚感、開放感に包まれた。

ヘフリガーのピアノは、自由奔放なところがあり、ハーンと親密に会話をすると言うよりも、やや我が道を行くというようにも感じられた。第2楽章はもう少し寄り添っても良かったのでは。

第3楽章もハーンは安定感があるが、ヘフリガーとのスリリングなやり取りという印象とは異なる。

 

ベートーヴェン「ヴァイオリン・ソナタ第10番」

穏やかで抒情性のある佳曲なので、ハーンの瑞々しい品のある美音が曲想に良く合っていた。特に第2楽章アダージョ・エスプレッシーヴォが歌心に満ちて絶品。ヘフリガーの玉を転がすようなピアノもここに来てハーンと一体となった。少し暗めのスケルツォから楽しげな主題の第4楽章に休みなく入っていく。

フォルテとピアノが交互に繰り返される第4変奏の後の第5変奏アダージョ・エスプレッシーヴォでは、ヘフリガーのピアノとハーンのヴァイオリンが幻想的に絡み合い、別世界に誘われた。コーダで静かに主題が出た後、唐突にプレストになり、フォルティシモで締めた。

 

この時点で、まだ午後8時半を過ぎたくらい。アンコールは3曲。最初はハーンのソロで、バッハ「無伴奏パルティータ第2番からサラバンド。豊かで大きな世界が広がる点はさすが。ただ5年前に聴いた無伴奏パルティータ第1番のような凄みはなかった。

今日のリサイタル全体にも言えるが、今のハーンは落ち着いて余裕を感じさせる演奏に変わったように思える。2019年からサバティカルに入ったが、コロナ禍が重なり、かなり長い間活動を休止していた。それが何らかの形で影響しているのかもしれない。

 

続いて、ヘフリガーが登場し、今度はピアノソロで、ワーグナー(リスト編曲)「トリスタンとイゾルデ」よりイゾルデの愛の死が演奏された。

スケールの大きな演奏。残響が完全に消えていくまで、静寂が保たれた。

 

最後はもう一度二人で登場。ハーンは曲目を日本語で告げたようだが、2階席のためよく聞き取れず。作品は佐藤聰明「微風」。ヒーリング的であり、ペルトのようなミニマル・ミュージックのようでもある。

youtube↓に音源があった。

佐藤聰明:微風 / ハーン - YouTube

 

ウィキペディアのプロフィール

佐藤 聰明(さとう そうめい、1947年1月19日 - )は、日本の現代音楽作曲家。佐藤聡明とも表記される。

 

宮城県仙台市出身。作曲を独学。日本大学芸術学部音楽科中退。1983年、エイジアンカルチャーカウンシルの招きでニューヨークに一年間滞在。

 

作品はアメリカ、ヨーロッパ、環太平洋諸国で幅広く演奏されており、ことにアメリカでは個展が音楽祭等で十数回にわたって催されている。多くの作品がCD、レコード化されており、1988年、CD作品集「LITANIA」がニューヨークタイムズの年間ベスト・レコードに選ばれ、全米公共放送の第二位にランキングされた。

 

1980年に文化庁芸術祭賞、1997年にニューヨーク・ダンス・アンド・パフォーマンス賞を受賞。1999年、クルト・マズアとニューヨーク・フィルハーモニックが企画した「メッセージス・フォーミレニアム」の際に、オーケストラ曲「KISETSU」を委嘱。2002年、中島健蔵音楽賞を受賞。2015年に映画「FOUJITA」(監督:小栗康平)の作曲を担当した。

 

写真:ヒラリー・ハーン©Dana van Leeuwen Decca 


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