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Channel: ベイのコンサート日記
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上原彩子&松田華音 ラフマニノフ ピアノ・デュオ・リサイタル(6月7日・サントリーホール)

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「ロシアンピアニズムを継承する本格派2人の響演!」のキャッチフレーズ通りの充実のデュオ・リサイタルだった。

12の歌 Op. 21より 5曲「リラの花」変イ長調 (松田)

可憐な作品でスタート。繊細な表情。

 

練習曲集「音の絵」Op. 39より 6曲「赤ずきんちゃんと狼」イ短調 (松田)

一転、おどろおどろしい低音が鳴り響き、赤ずきんちゃんが狼に襲われる場面が展開する。1曲目の優しさから、地獄の世界に突き落とされたような転換。松田の一見華奢な雰囲気からは想像できないダイナミックな演奏。

 

楽興の時 Op. 16より 6 ハ長調 (松田)

ラフマニノフが23歳の時に書いた作品だが、スケールが大きい。

ハ長調とは思えない陰影の濃さも感じられた。

 

2台のピアノのための組曲 2 Op. 17 (1st 松田 2nd 上原)

第2曲ワルツは、3拍子の中にシンコペーションが入る複雑なリズム(ヘミオラ)だが、二人の息が実に良く合う。同時にそれぞれの音色の違いも味わう。二人とも華やかな音だが、松田が明るめに対して上原は鋭さのあるダイナミックな音。

第4曲タランテラが圧巻。雪崩打つような二人の推進力が凄かった。

 

前半は松田華音がソロを弾いたが、後半は上原から。

13の前奏曲 Op. 32より 2 変ロ短調/第6 へ短調/第10 ロ短調 (上原)

上原の演奏は、堂々としてスケールが大きい。低音の厚み、迫力はラフマニノフの音楽の巨大さを良く表す。ただ、もう少し多彩なニュアンスや色彩感を出したり、あるいは映画をみるようなドラマ性を表現しても良かったのでは。日本的と言えるようなモノクロの色合いと強弱中心の表現がやや単調に思えた。

 

交響的舞曲 (2台ピアノ版) Op. 45 (1st 上原 2nd 松田)

ソロでは辛口を書いたが、2台ピアノでファーストを担当した上原はすごかった。

特に第3楽章。中間部の第1主題の再現から「怒りの日」の旋律が弾かれ頂点に向かっていくクライマックスでの上原のピアノは鬼神のようであり、獅子奮迅とも形容できる凄まじさ。松田と共に、オーケストラの音を凌駕せんばかりの迫力で、しかも音楽的なバランスを崩さずに、驚愕の演奏を繰り広げた。

 

2台ピアノの最高峰と上原がプログラムの挨拶で書いているが、まさに音楽も、そして二人の演奏も2台ピアノの最高峰を極めたような名演だった。

 

アンコールラフマニノフ「2台のピアノのための組曲第1番《幻想的絵画》Op.5」より、第3、第4楽章。ファーストを松田、セカンドを上原に交替して弾いた。

 

ラフマニノフには珍しく、各楽章に詩が引用されている。

ウィキペディアの解説を参考までに。

組曲第1番 (ラフマニノフ) - Wikipedia

 

第3楽章「涙」はミニマル・ミュージックを先取りするかのよう。第4楽章「復活祭」は鐘が鳴り響く光景を表している。松田の弾く鐘の音の巨大なこと。これまたすごい演奏だった。


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