第4楽章が素晴らしかった。張りのあるヴァイオリン群の強靭な響き。厚みと重みのあるチェロとコントラバスが充実した響きを創り出す。コーダの「死に絶えるような」最弱音に至る経過でも弦楽器セクションは集中を切らさず、最後まで緊張感が維持された。
第1楽章から第2楽章は、14型の規模のためか、沼尻竜典の指揮のためなのか、粘りがないあっさりとした響きで、厚みも少ない。室内楽的なマーラーを目指しているのかと思ったが、金管はしっかり鳴らすので、その方向性でもないようだ。
第3楽章ロンド・ブルレスケでの盛り上げ方と第4楽章の2つの楽章の充実とは対照的であり、沼尻がプレトークで語った「第1楽章と第4楽章が長く左右対称の構造になっている」という解説とは異なる印象を受けた。
コンサートマスターは石田恭尚。神奈川フィルは楽員が入場すると拍手が起こる。「自分たちの街のオーケストラ」という聴衆の気持ちがこもっていて、温かい雰囲気が醸し出される。石田が登場するときの拍手の大きさに、彼の人気を実感した。