(11月20日、NHKホール)
2015年ショパン国際ピアノ・コンクール優勝のチョ・ソンジンを迎えて会場は満席。しかし演奏はコンクールの映像とは違って精彩がなかった。10月にコンクールが終わって休む間もなくツアーや記者会見が続き、疲労がたまっているのだろう。ショパンのピアノ協奏曲第1番では第1楽章でピアノが入るところでミスタッチがあった。全体に打鍵も平板でダイナミックの幅が狭く、デッドなNHKホールなのでなおさら響きが弱い。第3楽章のコーダに向かって、ようやく乗って来たと感じた。弱音や三連音の美しさは印象に残った。
フェドセーエフN響のバックも11月5日に聴いた広上淳一の指揮(ピアノ:小山実稚恵)と較べると瑞々しさが足りなかった。チョ・ソンジンには来年1月の入賞者ガラ・コンサートで本来のピアノを聴かせてくれるものと期待したい。
後半はフェドセーエフが得意とするロシア音楽集。フェドセーエフは指揮台に飛び乗る元気な姿を見せたが、今年2月の急病からの復帰後のため本調子ではないように見えた。それでもハチャトゥリアンの「ガイーヌ」から「剣の舞」「レズギンカ舞曲」は、民族色が良く感じられたし、チャイコフスキーの序曲「1812年」では、金管の増強と打楽器群の大活躍で聴く者を圧倒した。
チョ・ソンジン(c) Bartek Sadowsk