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Channel: ベイのコンサート日記
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東京文化会館 バースデーコンサート 佐渡裕 東京都交響楽団 藤村実穂子

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(4月7日(水)・東京文化会館大ホール)
60年前の今日、東京文化会館がオープンした。そのときのプログラムはブログの一番下に転載したように、金子登指揮の東京芸術大学音楽学部管弦楽部によりドヴォルザーク《新世界より》が演奏されたが、今夜はそれにちなみ同じ曲が演奏された。

 

最初は祝祭にふさわしいワーグナー「楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』より 第1幕への前奏曲」。
佐渡裕は大音量で派手にオーケストラを鳴らすが、マイスタージンガーの動機、求愛の動機、ダヴィテ王の動機が重なる対位法の面白さが団子状態の強奏にあっては混濁するばかり。コーダはここぞとばかりにマイスタージンガーの主題を金管に咆哮させるので汚い音になってしまう。私が佐渡を苦手とするのは、こういう演奏が多いからでもある。

 

しかし、最後に演奏したドヴォルザーク「交響曲第9番《新世界より》」はそうした音の混濁がなく、意外に良かった。佐渡は都響からしなやかで、バランスの良い音を引き出した。この演奏は私の佐渡観を少し変えた。

 

第1楽章は序奏から分厚い音で惹き付ける。提示部の繰り返しはなかったが、全体的にシンフォニックなまとまりの良い演奏だった。ただ、コーダを煽るのは佐渡らしい。

第2楽章は木管と弦が交差する中間部を細やかに描いた。第3楽章スケルツォは、切れ味がある。アタッカで入る第4楽章もトランペットによる第1主題が爽快に吹かれる。コーダに向かって着実に進めていく指揮は誇張がなく、音楽の流れが良い。最後に主題を金管が強奏するところは思い切り鳴らしたがバランスは良かった。

 

前半のワーグナー「ヴェーゼンドンク歌曲集」は、藤村実穂子が尻上がりに調子を上げ、「トリスタンとイゾルデ」の楽想が現れる第3曲「温室で」、第5曲「夢」では深々とした声で魅了した。ただ絶頂時の藤村の歌唱に聞かれる、聴く者が襟を正さざるを得ないような威厳を感じさせるまでの歌唱ではなかった。佐渡と都響のバックといまひとつ一体感がなかったためもあるのでは、と推測した。

 

プログラムがすべて終わったあと、佐渡がマイクを持って登場。日本の音楽の殿堂である東京文化会館で記念のコンサートができる名誉と喜びを語った。まずこのホールが優れた芸術家を育てる畑であることに触れ、自身も兵庫芸術文化センター管弦楽団とのオペラや日生オペラでの小澤征爾のアシスタントとして、何度もこのホールで指揮したこと。開館の年の5月にニューヨーク・フィルハーモニックとバーンスタインが初来日。当時副指揮者だった小澤征爾が同行し、日本の曲をということで黛敏郎の「饗宴」を小澤が東京文化会館で指揮したこと。バーンスタインは「ヤング・ピープルズ・コンサート」を、黛は「題名のない音楽会」を、小澤は「オーケストラがやってきた」をスタートさせ、後に佐渡自身も「題名」では司会を務めたという縁、バーンスタインも小澤も佐渡の先生であること、さらに開館の年の5月13日に佐渡が生まれ、今年還暦を迎えることにも触れ、『これはもうご縁と言うしかないですね』と佐渡は話した。

 

アンコールに佐渡はバーンスタイン「ディヴェルティメント」から“ワルツ”を演奏した後、ストラヴィンスキー「ハッピーバースデー(グリーティング・プレリュード)」を指揮して、祝祭を締めくくった。

東京文化会館のアーカイブより(表記は当時のまま)
1961年04月07日(金)大ホール
<落成式記念演奏>

ベートーベン : 「エグモント」序曲

J.S.バッハ : 組曲No.3 ニ短調

W.シュヒター指揮 NHK交響楽団

 

<落成披露演奏会>
チャイコフスキー : 弦楽のためのセレナーデ 

モーツァルト : ピアノ協奏曲 イ長調 K.488

ドボルザーク : 交響曲第5番「新世界より」

金子登指揮 東京芸術大学音楽学部管弦楽部 安川 加寿子(ピアノ)

 


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