
(1月17日、武蔵野市民文化会館小ホール)
誕生日にバッハの無伴奏チェロ組曲全曲を弾くという催しを15年続けている藤原真理。毎回曲順を変えるとのことだが、今年は第3・2・4番、第1・6番、第5番の順で、間に休憩を入れた。
第1番と最後に弾かれた第5番はゆったりとした音楽の流れと、藤原真理が自身の人生を語るような趣があった。しかし、全体として緩やかなプレリュードとかサラバンドは味わいがあるのに対して、クーラント、ブーレ、ジーグなどテンポが速い曲では弓が追い付かず、ぎくしゃくとしていた。中でも技術的に難しい第6番は格闘しながらかろうじて弾ききったという印象で、聴いていて少しつらいものがあった。もうひとつ気になったのは、豊かに響くチェロにも関わらず、ここぞという強奏で力が入らず、芯のない演奏になることだった。
こうした疑問は全曲を弾き終わったあと、藤原真理が語った言葉で氷解した。六十肩を患っているという。五十肩も六十肩も呼び方が違うだけで、自分も経験があるが、腕を上げたり曲げたりする時に激痛が走る。コンサートをキャンセルしてもよかったのではと思うが、15年間続けていること、武蔵野市民文化会館が改修に入るため次は2年後になることから、無理を押したのではと想像する。1月17日は阪神淡路大震災の日でもあり、追悼の言葉と共に、2年かけてリハビリしますと締めくくった。藤原真理が万全の体調の時にもう一度聴いてみたい。
(c)Atsuya Iwashita